最終更新日−2005/09/16
20世紀後半から終盤にかけての過度の進歩・発展の追及に伴って生じた問題点の1つとして、環境への負荷の増大が挙げられている。社会基盤施設の建設においても、経済性の追求を重視するあまりに、地域環境・地球環境に及ぼす影響が必ずしも十分に考慮されてこなかったと言えよう。しかしながら、バブル経済崩壊後の低成長時代に入ると、物的な満足よりも内面的な豊かさが重要視されるようになり、豊かで快適な生活環境・自然環境の保全が求められるようになってきている。
このような状況下において、土木構造物が環境負荷に及ぼす影響に対する関心も高まってきており、3R(Recycle、Reuse、Reduce)を意識した設計の重要性も叫ばれている。土木学会の活動に限ってみると、2000年8月に開催された鋼構造委員会主催の第3回鋼構造と橋に関するシンポジウムにおいて、「環境に配慮した鋼構造物」がテーマとして取り上げられた。また、2001年には、「環境負荷低減型土木構造物設計ガイドライン」が刊行されている。さらに、2003年9月の土木学会全国大会では、鋼構造委員会主催の研究討論会において、環境負荷低減と深く関わりのある「鋼構造物のLCC評価の現状と将来展望」が研究テーマとして取り上げられ、幾つかの具体的な評価事例が紹介された。
しかしながら、鋼橋を代表例とする鋼構造物に生じる振動や騒音が、実際にどれだけの負荷を地域環境に与えているのか、鋼構造物のライフサイクルにおいて排出されるCO2の量がどの程度地球環境に悪影響を及ぼしているのかについては、必ずしも明らかにされておらず、現時点では、環境評価を取り入れた鋼構造物の設計体系が確立されていないのが実情である。
本小委員会では、鋼橋に生じる振動や、これに伴って放射される騒音(低周波騒音を含む)がどの程度地域環境に負荷を与えているのかを評価する手法(例えば、貨幣価値として算出する方法や効用値として算出する方法)、鋼橋のライフサイクルにおいて排出されるCO2の量等がどの程度地球環境に負荷を与えているのかを評価するプロセスの構築に向けた調査検討を行う。また、現時点までに実用化されたり提案されたりしている「環境負荷の少ない構造形式や形状・構造材料、施工技術、維持管理技術」等の調査を実施する。そして、これらの成果を取り込むことにより、環境負荷低減を定量的に考慮できる鋼構造物の設計手法の確立を試みることを目的とする。
目的で述べたように、以下の活動を予定している。
委員長 | 杉山俊幸 | 山梨大学大学院 |
幹事長 | 深田宰史 | 金沢大学大学院 |
委員 | 薄井王尚 | 株式会社富士エンジニアリング |
勝浦啓 | 三菱重工業株式会社 | |
河田直樹 | 株式会社エース | |
金哲佑 | 神戸大学大学院自然科学研究科 | |
酒井修平 | 日本道路公団 | |
酒井正和 | 三井造船株式会社 | |
塩田正純 | 飛島建設(株)技術研究所 | |
竹宮宏和 | 岡山大学環境理工学部 | |
千野嘉英 | 株式会社コミヤマ工業 | |
中野幹一郎 | 株式会社東京鐵骨橋梁 | |
畑中章秀 | Hitz日立造船株式会社 | |
原田政彦 | 大日本コンサルタント株式会社 | |
平野みゆき | 大阪市建設局土木部 | |
松本泰尚 | 埼玉大学工学部 | |
横川英彰 | オイレス工業株式会社 | |
連絡幹事 | 大鳥靖樹 | 電力中央研究所 |
(50音順,敬称略) |
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