クリップメモ 1998年4月号
水制工は,水の流れを制御し,河岸の保護や航路の維持等の機能を担う伝統的な河川工法です.緩流河川で用いられる杭出し水制やケレップ水制,急流河川で用いられる聖牛など,河川の特性に合せてさまざまな形態が考え出されてきました. その川ならではの形態を有する水制もあり,地域性豊かな河川施設であるともいえます.近代治水工法の発展により,次第にその数を減らしてきた水制工ですが,近年では,本来の機能に加え,自然環境の復元や景観の向上などの新たな価値が見直されています.(伊藤 登)
Manningの公式は,粗度係数を用いて水流の平均流速を求めるもので,その簡単な式形から現在広く用いられています.ところがこの形の公式を最初に提案したのはフランスのGaucklerやドイツのHagenだそうです.Manning自身は,この2人に遅れてこの公式を出すには出しましたが,すぐに引っ込めて別のややこしい公式を持ってきていたのです.
それなのに,フランスのFlamantが自分の本でこれをManningのものと誤って紹介し,そのうえ他の人も「Manningの公式」とよんでいるうちに,この名が定着してしまったようです.
粗度係数についても,その性質を実験的にまとめたのはスイスのStricklerですし,後で流体力学的な理由づけをしたのも,やはりManningの仕事ではありません.
さて,あなたがManningなら,これを見て「ラッキー!」とおもいますか.それとも……? (池田裕一)
潜水橋は,通常の河川の水位においては水面上にあり,一般の交通に利用できますが,大雨などによる増水時には文字どおり,水中に潜り使用できなくなる橋のため,沈下橋,もぐり橋とも呼ばれることがあります.
普通の橋と比較して,桁下高さが低く,橋長も短いため,建設費を安くできます.一方,川の流れを妨げないよう高欄や防護柵はないので,転落の危険もあり,安全性の面では通常の橋より劣っています.また,堤防のところに上り下りの急な坂道があることもあり,自転車や歩行者にとっては不便な点もありますが,潜水橋は親水性に富み,河川と一体となった素朴な自然風景を醸し出すとともに,地域住民の生活に不可欠なものとなっています.
四国には,四万十川流域を始め,吉野川,肱川などに多種多様な潜水橋(橋長522m高瀬潜水橋(吉野川)など)が現役で活躍しており,地域住民のみならず多数の人々に生活文化施設として末永く利用してもらいたいものです.(長尾文明)