クリップメモ 1998年8月号

 

わが国のダムの貯水容量規模は?

 ビクトリア湖を貯水池としているウガンダのOwen Fallsダムを別にしても,ウクライナのKakhovskayaダムが1 820億G,ザンビアのKaribaダムが1 806億Gと続き,世界の20指に入る巨大貯水池はいずれも450億G以上の貯水量を誇っています.琵琶湖の湖水量が約276億Gといわれていますので,その貯水の大きさたるや…と想像をめぐらし,ダムの上に立ってその貯水池の大きさを実感しようと試みても,対岸見えないので,外海を望んだ時の感じとそう変わらないのではないかと思います.

 一方,わが国で最大貯水量を誇る完成ダムは福島・新潟両県にまたがる奥只見ダムで,総貯水容量約6億Gです.ダム建設技術水準の高さを世界に誇っているわが国ではありますが,島国で河床勾配が急なことから,ダム建設の効率の悪さはいかんともしようがありません.(田中 靖)

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水防林

 水防林は,日本の多くの地域で古くから用いられてきた伝統的な治水工法のひとつです.水防林は,河岸の侵食を防止するとともに土砂礫をふるい分け,堤内側への土砂流の流入を食い止めて,災害時の耕地や家屋の被害を軽減するなど,きわめて大きな防災上の効果を有しています.また,沿川住民による自主的管理が行われ,竹の子狩りや栗拾いなどの生産の場,レクリエーションの場ともなっていました.

 用いられる樹種には,マダケ,メダケ,モウソウチクなどの竹類やクスノキ,ケヤキ,エノキ,マツなどが多くみられます.

 水防林を現代的視点でみると,沿川の自然資源や景観資源,歴史的資源としてきわめて有用な価値を持つものの,洪水を早く流下させようとする従来の治水方式の考え方とは相容れず,これまで減少の一途をたどってきました.水防林は,現代の河川環境整備上の課題を解決するいくつかの重要な効用を有しています.かつての水防林を公園として整備した万力公園(山梨県笛吹川,万力林)や中の島公園(福岡県矢部川,狐林)のように,現代的な意味での水防林の再評価とその再生,活用が望まれています.このたびの河川法改正による「樹林帯」の位置づけは,保全・再生への道を開くものといえましょう.(伊藤 登)

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典型七公害と地球環境典型七問題

 典型七公害とは,大気汚染,水質汚濁,土壌汚染,騒音,振動,地盤沈下,悪臭のことで,従来型公害とも呼ばれています.一方,地球環境典型七問題とは,地球温暖化,オゾン層の破壊,酸性雨,海洋汚染,熱帯林の減少,生物多様性の減少,砂漠化の7つを指します.両者の主な相違点は,前者は多くの場合,被害者側と加害者側が峻別され,被害が明確かつ直接的で顕在化するまでの時間が短いが,被害地域は局所(限定的)であるのに対して,後者は多くの場合,被害者側と加害者側を区別しにくく,影響の内容や程度が間接的でかつ不確定性が残り,顕在化するまでに長い時間がかかるが,影響の規模は地球全体に及び影響が出始めたら止めるのはほとんど不可能,という点です.また物質によって,従来型公害の視点では善玉でも地球環境の視点では悪玉となったり,その逆のケースもあります.前者の例としては,二酸化炭素(完全燃焼した無害な排気ガス)とフロンガス(日常生活においては安定かつ安全で,健康への影響がない物質)があり,後者の例ではSOx(地球温暖化の抑制効果)が挙げられます.(大坪國順) 

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