土木学会誌12月号モニター回答

学会誌をどう編集するか

 自然環境にダムが与える影響の程度については,かねてから問題提起され続けている.これについては,ダム建設地点におけるダムの存在そのものによる環境破壊という問題と,ダムの建設によって下流域の自然環境や生態系が異なったものになるという問題があると思う.本稿は,後者に関連した人工的に洪水を発生させることによって河川の生態系保全機能を維持する方法についての解説であった.ここでは,人工洪水によって,ダム建設前の河川の生態系を完全ではないにしろ復元することを目的としている.このような考え方があることに驚きを覚えるとともに,ここで言われているアダプティブマネージメントの概念は,河川以外の生態系環境保全を推進していく方法論としても有用性が高いと感じた.
(運輸省港湾技術研究所 米山治男)

 ダムからの環境放流の問題に関係していることもあり、関心を持って読んだ。
(松江高専 裏戸 勉)

 建設省の「第二次河川技術開発五箇年計画」の主要課題を見てみると、水・土砂の循環管理、河川工作物整備における生態系の保全、自然災害未然防止のための危機管理体制等が挙げられており、河川の計画段階から管理段階までの広い段階における住民参加型の管理体制が今後の河川管理のあり方と考えられる。
 米国のグランドキャニオンダム、我が国の比奈知ダムの人工洪水の事例他、ダム下流に採取した堆砂を設置し洪水時に掃砂する実証試験が試みられるようになってきている。今後益々ダム等河川構造物整備による環境負荷低減が強く求められる状況では、このような実証試験が今後も数多く行われると思うが、アダプティブマネージメントにおいて重要なことは実証試験の成果の善し悪しに拘らず、得られた成果の情報公開をおこなうことであろう。
(電源開発(株)茅ヶ崎研究センター 下越 仁)

 人工洪水を人為的に引き起こすことで、生態系改善を図るという試みはダイナミックであり、それがゆえに慎重に対処すべきであると思います。河川に生息する水星昆虫類は環境変化に対して敏感に反応するものと考えられ、報文の比奈知ダムのデータは本河川状況でおいてのみ有効である可能性も否定できないのではないかと思います。支流に設けられた多目的ダムの生態系に与える影響として、釣り雑誌には、ダム底部からの低温水の放水によって、従来、捕獲されるはずのない下流域においてヤマメが捕獲されるケースが報告されています。この事態が是が非かは別として、土木構造物(人為)が生態系に与える影響は少なくないということだと思います。
(新日本製鐵 石田宗弘)

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