土木学会誌5月号モニター回答

特集 岐路に立つ大学教育

 大学を卒業して既に10年。少子化、入試制度、国立大学の独立行政法人化の議論などが行われ、断片的に大学のあり方などを耳にすることはあったが、今回の特集によりある程度まとまった形でこれまでの取り組みやこれからの課題などを知ることができた。ただ、大学教官の側の視点がほとんどであるという点と、これまでにも言われてきた課題等が多いと感じた。1点目については、これまでにも学生の声が特集なり連載なり紹介されることもあったように思うが、これから大学に入る高校生などの声、あるいは卒業直後の実際に"いま"の大学、"これから"の大学の主役の意識を第2弾としてとらえてはどうか。2点目については、寄稿者も含めた社会の要請と大学の教育、そして大学までの教育の方針などそれぞれが一致するような方向に進んでいるのか疑問に思う。
(国土庁 中本 隆)

 土木工学は総合工学として認識され、工学分野のリーダーとして長年の歴史を刻んできている。大学教育の場においても高度成長期には、最も充実した成果を残した実績がある。と思われる。しかし、当時の大学教育の成果と土木業績の社会への広報は、一般国民に対して実績を表現するのに相応しく理解しやすいものではなかったと思う。設計基準や施工法、計測・調査や情報化の技術的レベルなどは、確実にこれらの時期に発展し軌跡を残している。これは、関連分野において仕事をするものにおいてははっきりと認識され、また認識抜きでは仕事が進まない程発展も急進的であった。土木を専門とするものにとって常識であったことが、世間一般には建造物や新幹線などの完成した形での理解に止まっていたのではないだろうか。今、岐路に立つと題して土木の専門教育を中心に特集が組まれたが、これはこれとして、ここ10年来の土木工学の一般国民への広報活動の不足が反省される。11月18日を土木の日に定め、小学生程度でも土木に興味をもてる行事を企画してきた学会である。改めて、大学での専門教育を含めた小・中・高からの一環した土木教育プログラムに関する議論を期待する。
(鹿島建設梶@中込國喜)

 総論をはじめとして、今回の特集は面白かった。魅力ある研究機関、国内、国外を含めて社会が変化するなかで、大学が変革をせまられているように、民間の研究機関も変革が迫られている。そして、総論に示されていたように「研究機関のあり方」、「技術者の量と質」、「技術者の活用」は、土木界の課題であると同時に、研究機関の抱える課題でもある。これからは意識的に変革を実施しなくてはならない。「大学土木教育における今後の大きな変革と改革」の論説はよかった。研究開発を魅力的な職域にするために、大学だけでなく、民間の研究機関も具体的にかつ実際に努力することが必要である。
(電源開発 喜多村雄一)

 個人的には、随分思い切ったテーマの特集で、先生方の危機感がよく伝わってくる興味深い内容のものでした。また逆に、教育を受ける側の学生は、大学教育のあり方についてどう考えているのか、意見を聞いてみたいと気がします。今回の一連の記事に対する、会員や読者から寄せられる反響についても、是非、学会誌で紹介していただければと思います。
(新日本製鐵(株) 佐野陽一)

 どうも日本の大学は子どもに媚びている気がしてならない。入試科目を減らしてみたり、一芸入試を設けてみたり、いったい大学は何をするところなのですか?偏差値教育が悪い?それより勉強もできない子供たちを大学に入れることの方が問題なのでは。そんなことをしているから大学生の学力は低下し、大学で学ぶことの喜びを理解できないのでしょう。偏差値教育を批判する人に聞きたいが、大学入試のハードルを下げて何かいい事はありましたか?私はその結果が学生の学力低下に表れている気がしてなりません。大学は最高学府であり、日本の将来の知識人や技術者を育てる場です。専門学校ではないのです。したがって、専門教育を受ける前提としてグローバルな基礎知識及び基礎学力を有する必要があるのです。だから、文系の学生でも数学や理科の知識は必要だし、理系の学生であっても国語や社会の知識は必要なのです。歴史や経済その他社会の事に無知な科学者がいたら、それは社会のためになりません。むしろ社会の脅威になるのです。専門以外の勉強をするのが嫌なら大学にくる必要はありません。専門学校に行けばよいのです。その辺を考えて、大学ではインテリと呼ばれるにふさわしい幅広い知識を持った学生を養成して欲しいものです。その知識を身につけてはじめて専門教育が学生の身に付き有意義なものになるのではないでしょうか。
(首都高速道路公団 福田朋志)

 今回のテーマ「岐路に立つ大学教育」は、今まさに待ったなしの状態であり、後数年たったら手遅れになる内容であるので、非常に興味深い内容でした。このことは、社会全体の問題ですが、まずは、若い学生が直接問題と関わる内容です。その割には若い人の意見が少なかったように思います。どうしても、年輩の方々の話が多くなってしまうことが残念でなりません。 若い学生が、この議論に飛び込んで意見が言えるように、頑張らなければと、思いました。若い学生が、理路整然とした議論を展開するためには、先輩方に比べて何倍もの様々な準備が必要ですが、若い学生は、機会を見つけてチャレンジしなければならないと思います。若い学生が、社会をリードすることができるようになったらいいと、常々思います。
(鳥取大学 里田晴穂)

現在、大学教育のあり方と言うと行政独立法人化の話に結びついてしまうわけであるが、本特集においてはより広い視点にたって、大学土木教育を通した大学教育の過去,現在,未来を展望し、編集されており、教官である私にとっては単なる読み物と言うより教育者として自分を見つめるよい機会となりました。また、土木学会誌が今話題の大学教育のあり方について、このような取り上げ方をしたという点についても大いに評価したいと思います。
(松江工業高等専門学校 高田龍一)

大学に勤務するものとして、今回の特集を興味深く拝読しました。今回の特集は、議論を深化させるための情報提供や問題提起となってますが、今後、学会としての提言や提案に結びつくことを期待したいと思いました。
(金沢大学 伊藤 悟)

大学とは、今後どのようになるのか。その求めうる存在意義、将来像を考えさせられた。今後の大学の国際化、社会人教育を考えたとき、大学(教官)サイドの考え方は十分汲み取れたが、これを指導し認可する文部省、大蔵省、労働省の対応(方向性)の開示が求められた。中立な立場である学会だからこそこれらを一堂に会した対談等もう一工夫出来たのではないか。今後のこの国の行く末を決めるキーワード「教育」だからこそ、今一歩踏み込んだ意見で構築されても面白かった。
(呉高専 市坪 誠)

東大の学環などにみられる研究組織の改革,独立法人化への動き,高度技術教育の国際標準,入試の見直し,学生の学力低下?など大学における研究・教育をめぐる課題は枚挙にいとまがない.今回の企画は,私にとって願ってもないものであった。私自身の大学院時代は,「技術教育」という視点はまったくなく,良い意味でも悪い意味でも「研究者」を指向する環境であったが,公立の研究機関から大学に戻って,大学院のカリキュラムや大学院生の意識がずいぶん異なっていることに驚かされた。などとのんきなことを書いていると,無知を宣伝するようだが,本特集をしっかり勉強したい。
(大阪府立大学大学院農学生命科学研究科 夏原由博)

  
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