土木学会誌8号モニター回答
土木学会技術者の総説と継続教育(CPD)の必要性を訴える
現在活発に議論が行われている技術者資格制度の話だが,自分の将来にもかなり直接的に影響を及ぼすであろうから,かなり興味を持って読んだ。自分は土木技術者,少なくともその卵ではある。しかし,何の予備知識もない人に自分のやっていることを伝えるとき,「私は土木技術者です」と言ってもイメージが伝わる気がしない。本稿でも指摘しているように,例えば医師や建築士のように国家資格に裏付けられた専門職に比べると土木技術者の社会的地位は現在は低いであろう。国際的にも通用し,かなり努力しないと継続できない資格制度を作るのはもちろん重要なことだと思うが,それと同時に土木技術者のやっている仕事・責務の具体的イメージを社会に持ってもらうようにする何らかの努力も必要だと思う。土木技術者が医師のような社会的地位を獲得するには様々な方面の努力が求められるだろうが,ぜひそうなって欲しい。土木技術者がある画一的なイメージで語られるようになっても困ると思うが,最初の挨拶は「土木技術者です」で済むくらいにはなって欲しい。
(東京大学大学院 細田 暁)
私は、土木事業においても責任の所在をはっきりするとともにその事業の企画者や設計責任者、施工責任者の名前を記すべきと考える。これによって、土木技術者の地位の向上や土木事業の意義の理解につながるのではないか。
((株)地域みらい 北原良彦)
技術力の継続的な向上、Professionとして地位の確立、国際化への対応など、その必要性はいずれも納得できるものではあるが、なぜ現在ある技術士とは別の資格が必要であるかの説明をもっとして欲しかった。土木学会案では技術程度によるランク分けや発注者や専門分野などの対象別の資格などAPEC Engineerよりもきめ細かいものを考えているようだが、APEC Engineer資格を基本として+αの部分のみ学会でフォローするような制度にできないのだろうか?縦割りシステムのために同じような試験を何度も受けなければいけないようなことは関係者の努力で避けて欲しい。
(大林組 西川直仁)
世界標準の波が土木にも及ぶことを実感しました.短期的に見れば今までの物造りのシステムが大きく変わることを意味する事になりますが、日本の土木技術が世界に出る為には通らなければならない道だと考えます.それと同時に世界を受け入れる契約システムの構築も必要だと思いました.
(日本鉄道建設公団 佐々木養一)
「20年後には公共事業が半減する」と予想される中、技術者にはさらに高い資質が求められ、厳しさを感じた。この様な流れの中、教育機関はどのように対応していったらよいか、教育機関のありかたを考えさせられてしまう。「努力する人間とそうでない人間の間で大きな差が生じる」とあるが、個々人だけの問題ではなく、技術者資格に対する企業の姿勢も問題となる。資格を取らせような環境を積極的に整えるかどうかも企業間で大きな差があると思われる。また企業の規模や業務内容も影響すると考えられる。この面での対応も考えておく必要であると思われる。
(長野工業高等専門学校 柳沢吉保)
技術士は難易度の割には一般の人々の認知度が低い資格である。認知度の低さは土木技術者の信頼性にも大きく影響している。これまでの不祥事などによって公共事業は悪玉呼ばわりされ、これに関係している土木技術者までもが悪者のように言われている。様々な土木事業の陰で、優れた土木技術者達の働きがあることを一般の人々は知る由もない。
技術士は医師や弁護士、建築士と同じ国家資格であるにも関わらず、この資格がなければできないといった規定がない。つまりこの資格はあっても無くても業務には一向に差し障りがない。これもまた技術士の存在意義と認知度を低くしている理由と思われる。
土木技術者資格の体系がどのようになるにせよ、土木技術者の地位向上のために、公共事業においても技術者の役割と責任が明確となり、一般の人々にも理解される仕組みができるように切に願う。
(清水建設 藤田宗寛)
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