コンクリート工学に関する中国土木水利工程学会―土木学会ジョイントセミナー
(2004.12.3, 中国土木水利工程学会, コンクリート委員会)
CICHE-JSCE ジョイントセミナー実施報告
1.はじめに
中国土木水利工程学会(CICHE)と土木学会(JSCE)の「コンクリート工学」に関するジョイントセミナーが、2004年12月3日に台湾の高雄市で開催された。これは、CICHEの総会(12月4日)に合わせて開催されたものであり、セミナー参加者は115名であった。本セミナーは、国立台湾大学のChan教授と堺が準備を進めてきたものであり、講演論文集を作成した。
2.本セミナーの内容
本セミナーのオープニングでは、CICHEの会長で国立台湾大学のChern教授とJSCE会長で政策研究大学院大学の森地教授から挨拶があった。また、土木学会コンクリート委員会からの記念品(名入れプレート付き置き時計)を森地会長からChern教授に贈呈して頂いた(写真)。
本セミナーの内容一覧は別紙に示すが、最初に東京大学の魚本教授による基調講演が行われた。その後、日本側及び台湾側からそれぞれ5つの講演が行われた。日本側の講演内容は、@コンクリート委員会の最新成果物の紹介、A日本企業の最新技術の紹介、及びB台湾からの要請事項の考慮に基づいて選択した。その結果、示方書から耐久設計を、指針から超高強度繊維補強コンクリート及び自己充填高強度高耐久コンクリートを、また、民間技術としては高信頼性コンクリート製造システム及び鋼コンクリート複合トラス橋の設計施工に関する内容となった。台湾側の講演は、5編の内3編が自己充填コンクリートに関するもので、この技術に対する関心の高さを窺わせるものであった。Chan教授は、自己充填PCコンクリート梁の長期挙動について講演したが、クリープによるたわみがかなり大きなものとなるとの知見を示したのが印象に残った。
各講演の終了後質問や意見の交換がなされ、セミナーとして充実したものとなった。
3.見学会及びCICHE総会
本セミナー翌日の4日にCICHEの現場見学会が実施された。前日から季節はずれの台風襲来でその実施が危ぶまれたが、台風一過の好天下で2カ所の現場見学を行った。1つは、台北と高雄間を結ぶ高速鉄道の高雄操車場であり、日本の新幹線車両700T型を見学した。この高速鉄道は日本の新幹線技術移転の最初の例となる。他の1つは、高雄の地下鉄建設現場を見学した。このプロジェクトには日本の複数のゼネコンが参加している。何れも、台湾が日本の技術に大きな期待をしていることが窺われた。
現場見学会終了後、外国人ゲストも参加してCICHE総会が開催された。その中で、高知工科大学の岡村学長にCICHEの名誉会員の称号が授与された。
4.おわりに
台湾は日本に統治されていた時代があったが、日本人に対する感情は良好なものであり、日本への期待が非常に大きいと感じた。今回のジョイントセミナーにより、台湾と日本の間のコンクリート技術分野においてある種の絆が深まったと思われる。これをきっかけに交流の拡大に向けた努力が望まれる。
台湾と言えば、当然中華料理である。セミナー終了後の高雄市主催の夕食会では本格的な中華料理が供され、フカヒレスープや北京ダックなどに舌鼓を打った。中華料理といえば老酒と思っていたが、お酒は赤ワインであった。酒席での台湾式交流方法も学んだ。
最後に、本セミナーでご講演頂いた方々及び会場準備や論文集作成にお骨折り頂いたChan教授、並びに本セミナー開催にご尽力頂いた関係各位に深甚の謝意を表する。
なお、本セミナーは、土木学会学術交流基金の助成を受けて行ったものである。
土木学会コンクリート委員会国際関連小委員会委員長 堺 孝司(香川大学)
左より、堺、森地土木学会会長、Chern中国土木水利工程学会会、Chan教授
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