土木学会が協力協定を締結している米国土木学会(ASCE)のライフライン調査団が来日し、土木学会は地震工学委員会の協力により、6月13日から17日にかけて合同調査を実施した。
今回来日したのは、ASCEのTCLEE(ライフライン地震工学技術評議会)で、ASCEの地震工学におけるライフラインを調査・検討する審議会であり、世界各地で起きた地震災害によるライフラインへの被害状況を調査・分析し、将来の災害に向けて、ライフライン供給システム、構造設備、機能などの向上と対策を検討、提案する機関である。2007年の新潟県中越沖地震の際にも調査に来日し、地震工学委員会が中心となり調査に協力した。
今回ASCEは、東日本大震災の被災地におけるライフライン、交通(鉄道、道路、空港、港)、電力・ガス供給システム、上下水道への影響、復旧作業(がれき処理、仮設住宅の建設など)を調査、分析し、これらの被害による社会的、経済的影響について調査することを目標としている。
調査団のメンバー構成は以下のとおりである。
ASCE TCLEE's Earthquake Investigation Team:
Mr. Curt Edwards, Psomas Consulting, TCLEE Leader
Ms. Yumei Wang, Oregon Dept of Geology and Mining Industries (DOGAMI)
Mr. Mark Yashinsky, California Transportation Dept. (CAL Trans)
Mr. John Eidinger, G&E Engineering System
Mr. Leon Kempner, Bonneville Power Authority
Mr. Alex Tang, L & T Consultant
Mr. Alexis Kwasinski, The University of Texas, Austin
Ms. Allison Pyrch, Shannon & Wilson Inc.
JSCE Team by Earthquake Engineering Committee
Prof. Kazuo KONAGAI, The University of Tokyo
Prof. Yasuko KUWATA, Kobe University
Prof. Takashi MATSUHIMA, Tsukuba University
Prof. Gaku SHOJI, Tsukuba University
Prof. Yoshinori MARUYAMA, Chiba University
Dr. Yoshiharu SHUMUTA, The Central Research Institute of Electric Power Industry (CRIEPI)
Officer: Ms. Yukiko SHIBUYA, International Affairs Section, JSCE
調査初日の6月13日は、今回の東日本大震災の津波被害や液状化被害、各種インフラ、ライフラインの被害について土木学会東日本大震災特別委員会特定テーマ委員会の津波特定テーマ委員会、液状化特定テーマ委員会の両委員会、ならびに地震工学委員会ライフラインの地震時相互連関を考慮した都市機能防護戦略に関する研究小委員会関係者、JR東日本、NEXCO東日本の方々にご協力をいただきブリーフィングを実施した。
Briefing Agenda:
1. Greetings/ team member introductions
2. TCLEE field survey schedule
3. Findings of field surveys done in earthquake and tsunami-affected areas:
1) 2011 Great East Tohoku Earthquake overview by Prof. Konagai
2) Tsunami impact by Dr. Arikawa (
Presentation File, PDF, 6.7MB)
3) Soil liquefaction behavior by Prof. Towhata (
Presentation File, PDF, 7.2MB)
4) Lifeline Restoration -overview by Prof.Nojima (
Presentation File, PDF, 0.7MB)
5) Affected waterworks management by Prof. Kuwata
Presentation File, PDF, 5.9MB)
6) Affected wastewater treatment facilities and maybe transportation by Prof Shoji (
Presentation File,PDF, 1.8MB)
7) Affected gas infrastructure by Prof. Maruyama (
Presentation File,PDF, 1.3MB)
8) Affected electricity supply system by Dr. Shumuta (
Presentation File, PDF, 2.9MB)
9) Affected highways by Mr. Ryoichi Nishikawa of NEXCO East
10) Affected train service and facilities by Mr. Ozaki of JR East Japan Co.
4. Q & A
午後には調査地へ移動し、3グループに分かれて3日間にわたり岩手、宮城の両県の各自治体やライフライン関連部局、企業、施設を訪問し、また沿岸部を中心とする被災地の調査を行った。また17日には千葉県浦安市における地盤液状化の被災状況を調査した。
ASCE-TCLEEは、短期間とはいえ今回の調査を取りまとめ、6月20日には調査団の報告会を実施した。今回同行いただいた小長井一男地震工学委員長ら出席者と意見交換が行われ、またこの機会に共同研究の実施についても検討することとなった。
【資料】ASCE-TCLEE調査報告会 プレゼンテーション資料(2011/6/20)(PDF, 2.2MB)
ASCEの東日本大震災調査団は、今回のライフライン調査団のみならず、4月下旬から5月下旬にかけて、数回にわたり調査団が来日している。来日の際は港湾空港技術研究所、早稲田大学、土木学会海洋開発委員会、土木学会地震工学委員会の協力をいただき調査が実施された。
一連の成果が、両学会、両国で共有され、さらに海外の学協会へと発信され、我が国ならびに世界で発生するであろう次の大地震への備えに反映されることを期待する。
13日のブリーフィングの様子
17日の浦安市液状化調査の様子