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(抜粋)

平成17年度 事業報告

自 平成17年4月  1日
至 平成18年3月31日

1.概要

 本年は「JSCE2005―土木学会の改革策―社会への貢献と連携機能の充実」に基づき、社会との信頼関係の構築に努め、学術・技術に関する調査研究を推進し、技術者の資質向上、国際化に向けた先導的事業および会員サービスの向上に対する事業ならびに社会貢献や信頼関係の構築を継続推進するとともに、各部門の事業活動の自己評価を実施しマネジメントサイクルを定着させた。また、昨年度に開始した全部門における活動度自己評価を継続して学会活動の活性化を促進しており、中でも調査研究部門は、調査研究委員会の活動度評価を定着させ新設/統廃合の審議手順を確立した。
 本部には60の委員会が設置され、調査研究部門を中心に研究成果を延べ 120回の講習会・セミナーあるいは32点の各種技術基準など刊行物で公開した。
 会長提言特別委員会では、「土木技術者がグローバル社会で活躍するために」をテーマに検討を行い、成果を出版物してとりまとめた。また、平成17・18年度会長特別委員会において「良質な社会資本整備と土木技術者に関する提言」を進めている。さらに、平成16年度会長特別委員会の成果である防災教育DVD「日本に住むための必須!!防災知識(小学校低学年用・高学年用)」の全国の小学校(約12,000校)への普及活動を行った。
 コミュニケーション充実の一環として、土木学会誌については、「五つの方針と五つの方策」(2004年6月)に基づいて、大幅な経費の節減のもとで取材の充実を行なうなど改革を実施した。出版についても、ダイレクトメールや広告の相互掲載など、広告・販売促進に努め一定の成果をあげた。図書館においても外部資金の支援を得てデータのディジタル化を進め膨大な資料の会員への利用時の利便性、情報発信能力向上に努めている。
 社会支援の一環として、インドネシア、パキスタン、米国など計6回の災害緊急調査団派遣とその速報会を実施し、さらに再建への提案、防災教育の継続を行なった。
 土木界の国際化に関しては、土木学会がアジアの先導的役割を期待されているとの認識に立ち、アジア土木学協会連合協議会(ACECC)の活動を支援しており、個別の学協会との関係ではインドネシア工学会と24番目の協力協定を提携し、ニアス島での復興支援を共同で実施するなどの成果を得た他、学術交流基金の活用によるジョイントセミナーなどの交流を活発に実施した。また、本学会の全国大会においても英語による研究討論会、ラウンドテーブルミーティングを開催し学会活動の国際化を図った。
 全国に配置した8支部に関しては、その活動を引続き支援充実するとともに、会員証の磁気カード化により会員の利便性を高めたことをはじめとする会員へのサービス向上と会員増に努めており、平成18年1月末現在の会員数は学生会員5,679人を含め40,053人となっている。
 技術推進機構においては、特に技術者資格制度の拡充に努め全4階層の実施では3年目であったが、815名の合格者があり、累計で2,580名に達した。

2.企画部門

 JSCE2005で提示された事項の迅速かつ適切な実施を進めるために、各部門との連携を図りながら、自律的なマネジメントサイクルの定着に努めた。また、次期中期目標・中期計画のJSCE20XX策定に向けての準備を開始した。
 社会への貢献と連携機能の充実に関連して、会員サービスの向上、コミュニケーション機能の充実のため年間4回のトークサロンを企画・開催し、学会誌への報告を行った。
 学術文化事業ならびに学術振興基金に関する募集を行い、申請研究課題についての審議を実施した。
 会長提言特別委員会では、「土木技術者がグローバル社会で活躍するために」をテーマに検討を行い、成果を出版物してとりまとめた。また、平成17・18年度会長特別委員会において「良質な社会資本整備と土木技術者に関する提言」を進めている。さらに、平成16年度会長特別委員会の成果である防災教育DVD「日本に住むための必須!!防災知識(小学校低学年用・高学年用)」の全国の小学校(約12,000校)への普及活動を行った。

3.コミュニケーション部門

 JSCE2005の提案に基づき、学会と社会、学会と学会員及び学会員相互のコミュニケーションをよりスムースに行うための体制と方法について検討を行った。また、学会内の各委員会における一般社会とのコミュニケーション活動についての調査を実施し各委員会の連携した活動の提案を行うとともに、土木について一般の人々に知ってもらうツールとして土木パンフレットを制作した。パンフレットについては会員を始め、土木の日行事などで今後広く配付する予定である。情報交流サイト(jsce.jp)の活性化を進めるとともに,学会ホームページ(jsce.or.jp)の改善に関する計画を策定した。
 土木学会誌については、「五つの方針と五つの方策」(2004年6月)に基づいて、「こうしました&こうします」(2005年6月)でこの間の評価を行ってきた。引続きこの方針に基づき編集作業を行ってきた。
 「土木の日・くらしと土木の週間」行事を各支部と協力して実施した。

4.国際部門

 国際交流を拡大するため、2005年8月にインドネシア工学会と24番目の協力協定を締結した。また、2005年11月には、モンゴルに4番目の海外分会を設立した。
 全国大会(2005年9月)では、大韓民国、台湾、フィリピン、モンゴル及びマレーシアの協定学協会から参加があり、自然災害発生時の国際協力のあり方をテーマとするラウンドテーブルミーティングを開催し、意見交換が行なわれた。また米国、大韓民国、台湾、フィリピン、モンゴルの協定学協会の年次大会に、三谷会長はじめ代表団を派遣した。
 アジア土木学協会連合協議会(ACECC)においては、2005年5月に土木学会がホストとなり第11回理事会を開催した。また、JSCE主導で津波技術委員会(TC)・メコン河技術委員会(TC)の活動を進めることになった。
 「国際化に向けてのアクションプラン」及びJSCE2005に基づき、英文Newsletter、Civil Engineering, JSCEや英文ホームページによる情報発信活動を実施した。
 公益信託土木学会学術交流基金の助成により、第7回インターナショナルサマーシンポジウム(2005年7月)及びジョイントセミナーをバングラディシュ(2005年8月)、ベトナム(2005年12月)と2回実施した。その他、土木技術者の海外派遣を12件、マレーシアの研修生をStudy Tour Grantに受入れた。

5.教育企画部門

 JSCE2005で提示された土木技術者の生涯に渡る学習継続の重要性に鑑み、技術者倫理教育やマネジメント教育などによる技術者の育成、初等教育における総合学習の支援に取り組んだ。
 中でも、技術者倫理教育については、「技術は人なり」を出版し、倫理教育の普及に努めている。また、マネジメント教育についても、昨年度出版した「若き挑戦者たち」を教材として各大学への普及活動を行っている。さらに、小学校において総合学習の支援を実施し、社会と土木界との係わり合いを強めるための活動を行った。
 各教育課程(大学・大学院、高専、専門学校、短大、高校)における土木教育の実態、課題等を把握するため、各種調査を行った。

6.社会支援部門

 緊急災害対応では、国内外の災害に対して被害調査、復旧・復興に関する技術的助言等を目的とした調査団を派遣した。パキスタン・ムザハラバード地震の被害(平成17年10月8日発生)に対しては、日本建築学会と共同して学術調査、現地セミナー開催および緊急報告書提供により現地での復旧・復興を支援した。また、ハリケーン・カトリーナ(平成17年8月)による水害に対しては、河川環境管理財団の支援を得て、河川・海岸の専門家による調査団を派遣し、米国専門家との緊密な情報交換を行うとともに、わが国の今後の治水対策に資する貴重な情報を収集した。これらのほか、インドネシアの地震・津波災害に対しては現地での防災教育や復旧・復興に関する支援を継続的に行っている。
 国内では、新潟県中越地震(平成16年10月23日発生)については、3次の調査団を派遣し、平成18年3月に被害調査報告書をとりまとめ、福岡県西方沖地震(平成17年3月20日発生)については、調査団を派遣し、17年8月に西部支部主催で報告会を開催し、それぞれ地震災害軽減への提言を行った。
 一方、日本建築学会、関係の部門と連携しつつ、我が国の海溝型巨大地震災害への対応検討を平成16年度に引き続いて行っている。
 司法支援については、最高裁判所からの要請に応え、司法支援特別委員会において、関係の部門と協力して土木関連分野の民事訴訟における鑑定人候補者の推薦を平成16年度に引き続き行った。
 

7.調査研究部門

 今年度より新設された「複合構造委員会」を含め、全29の調査研究委員会を擁し、JSCE2005に基づき下記事項を実施した。
 平成15年度から開始した委員会の前年度活動度評価とそれに基づく次年度調査研究予算の配分を実施し、継続して委員会活動の活性化を図った。結果、今年度の各委員会の活動度評価が全体的に向上した。
 部門の戦略的施策である重点研究課題(研究助成金)を実施し、平成18年度の課題として15課題の応募があり5課題を採択した。なお、平成17年度の研究成果(6課題)は土木学会誌および土木学会ホームページで早い機会に公表する。
 一方、学会の重要な任務と位置付けた司法支援に関し、最高裁判所から鑑定人推薦の依頼を社会支援部門と協力し、継続して適任者を推薦している。
 さらに、論文編集委員会と連携して、委員会が発刊できる「論文集」の基準を明文化し、論文集の水準の維持・向上を促すこととした。
 以上の他、各委員会は講習会、シンポジウム、受託研究等従前の活動や他学会との共催、協賛、後援など積極的に対外活動も実施、協力しており、かつ技術推進機構による「継続教育プログラム」についても積極的に支援している。

8.出版部門

 出版活動は、既刊図書の販売管理、新刊図書の製作および工程管理を引き続き行った。平成17年度では出版会計の健全なあり方、出版物の二次使用に関する対応、委託出版物に対する考え方などを検討した。
 販売促進活動として、ダイレクトメールの発送、出版物広告の相互掲載(日経コンストラクション、道路など)、学会主催の講習会における出版物の展示販売等を実施した。
 土木学会論文集は、7専門分野でそれぞれ年間4冊、計28冊と英文論文集年2冊の計30冊を刊行した。2006年1月号からは、オンラインジャーナル(J-STAGE)上での公開も開始した。論文集の電子ジャーナル化に伴い、新しい査読システムを構築中、電子投稿・電子査読化をさらに進展させるための対応・検討を行った。

9.情報資料部門

 土木図書館の年間利用実績は来館者数が4,100名で前年比1.3倍、複写依頼枚数が4万枚で漸増となっている。土木図書館ホームページの年間アクセス数は約25万件で、前年とほぼ同数である。情報提供サービスの充実を図り、検索データ2万件、論文原文pdf10万件、貴重デジタルアーカイブスとして「道路の改良」「土木建築工事画報」など戦前雑誌や、名著100選の2/3を作成した。土木図書館委員会では上記図書館活動を支援すると共に、会員・一般へのサービス向上、学会情報資源の活用を目指し、科研費等外部資金を導入して(1)類義語支援・連想型の検索システムの構築、(2)土木デジタルアーカイブスの拡張などの活動を行った。
 また、土木技術映像委員会では映像を通じて土木技術を広く一般に紹介するため、(1)コンクール受賞作品を中心に上映会「イブニングシアター」を開催(参加者合計約300名)、(2)土木技術映像の選定審査を実施(7作品)、(3)映像資料の保存(図書館所蔵劣化フィルムのDVDなどへの媒体変換50本)、映像情報データ整備(2,000件のデータベース化)などの活動を行った。

10.総務部門

 社会への貢献と連携機能の充実を図り、円滑な学会業務運営を進めるため、必要に応じ、細則・運営規程その他関連の内規等の改正について、検討を行なうとともに、関係の部門と協力して、学会情報の提供および保存・公開に係わる諸問題の解決に努めた。
 平成17年度は、名誉会員と功績賞の位置付けについて検討するとともに、他部門と協力して、総会および理事会等の会議資料のペーパーレス化に努めた。「土木学会災害緊急対応業務規程」の改正にあわせ、本部事務局における防災体制時の連絡系統図(夜間・休日)も含めた「土木学会の防災について(案)」の修正、非常食・飲料水等の点検・整備を行なった。
 第91回通常総会(5月27日)、平成17年度全国大会・第60回年次学術講演会(9月7日〜9日・早稲田大学)の開催に関しては、関係の部門・支部と協力して円滑な運営に努めた。また、第91回通常総会では、22名の方々に名誉会員称号を授与するとともに、功績賞10名、技術賞7件、環境賞6件、論文賞15名、吉田賞3件、田中賞9件、技術開発賞5件、出版文化賞2件、国際貢献賞4名、技術功労賞10名などを表彰した。平成17年度全国大会では、3,272題の発表と延べ14,720名の参加者を得た。

11.財務・経理部門

 次年度予算の基本方針作成にあたり、関係部門と連携して、会費収入、刊行物収入、技術推進機構など主要科目について中期(3か年)の収支予測を試算し、予算編成の指標とした。
 将来予想される創立100周年記念事業に備え、資金積立てを行ったほか、災害緊急調査に充てる災害調査積立金の積み増しを行った。
 ペイオフに関連して、債権運用などの情報収集を行った。
 平成18年4月に施行された公益法人会計の新基準に対応するため、会計システムの再構築を行った。
 支部会計において、支部責任者による4半期毎の会計報告体制の定着を図った他、支部事務局の会計処理効率化のため、一般管理費自動配分プログラムを提供した。
 会計処理周辺システムの充実を図るため、行事受付や請求書発行などの諸システムを小変更したほか、会員管理システムとの連携を図るべく検討を開始した。

12.会員・支部部門

 各支部と連携して、職種別、職場別会員数のデータをもとに、関係機関の協力を得て、個人会員、法人会員の増強に努めた。特に、各支部の協力のもとに大学、高専の土木系学生在籍数を調査し、各大学、高専へ学生会員入会、継続の協力依頼を実施、増強に努めた。
 磁気カード会員証の発行を実施し、個人会員、学生会員全員の継続教育制度への参加を可能にした。
 また、ID(会員番号)及びパスワードによる会員登録事項の確認・変更をWeb上で行える機能、併せてWeb名簿の構築等、会員管理システムの再構築を検討し、平成18年度の実施予定とした。
 メールアドレス登録勧誘を継続、メールニュース配信の充実、拡充に努めた。
 支部との連携をとりながら、支部活動への支援を行った。

13.技術推進機構

 平成13年度に創設した「継続教育制度」、「土木学会認定技術者資格制度」、「技術者登録制度」および「技術評価制度」の4つの制度を推進するとともに、ホームページ、学会誌、パンフレット等により会員への制度のPRを行い、学会事業として一層の定着を図った。
 「土木学会認定技術者資格制度」では、前年度と同様に、各支部の協力・支援を得て上級および1級技術者資格は各支部1会場、2級技術者資格は全国27会場で審査を行った。受験申込者数は、4つの資格で合計1,778名、そのうち815名が合格し、合格者は累計で2,580名に達した。
 「継続教育制度」では、会員証の磁気カード化を機に、継続教育制度のすべての会員への普及拡大と利便性向上を図るため、磁気カードの活用も組み込んだ継続教育記録(学習記録)登録の電子化を図り、6月1日から新しいCPDシステムとしての運用を開始した。
 「技術評価制度」では、1件の技術評価に取り組んだ。また昨年度取り組んだ案件について技術推進ライブラリーとして「設計・施工指針」を発行した。その他、国土技術総合政策研究所から「実践的ITSの調査研究」他1件、日本技術者教育認定機構から「技術者教育プログラム審査」1件、科学技術振興調整費1件、ISO関連委託業務5件、および民間から1件などの受託研究を実施した。