■ 会長室から
土木技術拡大の年へ
21世紀に入って土木技術の重要性はますます高まってきました。それは三つの側面から言えます。一つはインフラの老朽化であり二番目は日本の国際的貢献、三番目は気候変動です。
インフラは戦後半世紀にわたって社会を支えてきましたがそろそろ老朽化が見えてきました。2007年のミネアポリスの橋梁崩壊は他人事ではなく、同様の事故が日本でもいつ起こるかも知れません。私は2007年6月から会長特別委員会に部会を設けインフラ国勢調査に乗り出しました。その目的はインフラの現況を把握しそれを発表することによって国民の理解を促進し「崩壊する日本」にならないようにすることです。
二番目は国際貢献です。世界を見れば日本の50年前よりも貧しい社会、貧弱なインフラしかもたない国がアジアにも多数あります。会長特別委員会のもう一つの部会はアジアへの貢献を目的としています。
三番目の気候変動の問題は土木技術に対していっそう深刻な問題を提起しています。インフラを含め人間活動が自然の容量を超えたために起こった問題だからです。土木学会は自らの行動が自然に与える影響に留意することを倫理としていますが、いまや温暖化はまったなしです。土木技術者は全技術者の先頭に立って地球温暖化対策に取り組みたいと思います。
青山士は大河津分水の記念碑に「万象に天意を覚るものは幸いなり。人類のため国のため」と刻みましたが、われわれはこの言葉を噛みしめて業務にあたるべきでしょう。土木学会は6年後に創立百周年を迎えますが、先人に対し胸を張って現代の成果を報告できるよう努力したいと思います。
2008.1 土木学会誌vol.93no.1巻頭言
Last Updated:2015/06/12