■ 就任ご挨拶

2016年6月10日

「次世代に繋ぐ、生産現場のイノベーション」

第104代会長 田代 民治

第104代会長 田代 民治

この度、土木学会第104代会長に選任されました田代でございます。これから一年間、土木学会会長として一生懸命務めてまいりますので、よろしくお願いいたします。

今年4月、熊本地震が発生しました。被災された方々は今でも大変な思いをされていることと思います。心からお見舞い申し上げます。土木学会も、本部と支部が連携しながら、被害調査等を行い、その結果を広く発信してまいりましたが、今後も、復旧・復興、さらに次への備えも視野に入れ、活動を継続していかなければなりません。

さて、皆様ご存じのとおり、一昨年に土木学会は創立100周年を迎えました。今までの100年とこれからの100年を考え、「あらゆる境界をひらき、持続可能な社会の礎を築く」という100年ビジョンが宣言されました。そして、磯部第102代会長、廣瀬第103代会長のもと、本部、支部、海外で、これからの100年を睨んださまざまな学会活動が行われてまいりました。今年度もこれまでの活発な活動を引き継ぎ、さらに進めてまいります。

これからの100年を考える上で、まずは、世間でも言われている「担い手確保」が本当に重要だと考えております。将来を見据え、若手、女性をはじめとする人たちに我々土木の世界に入って来てもらわなければなりません。

今回の熊本地震、昨年の関東・東北豪雨と、自然災害が頻発する日本では、「持続可能な社会の礎を築く」という意味で、これから我々土木技術者がやらなければならないことは沢山あります。また、最近、品質問題や事故が目につきますが、こうしたことも担い手不足と無関係とは言い切れません。その対応のためには、土木を担うしっかりとした「人」を育てていかなければなりません。

「担い手確保」に関しては、その基本となる生産性向上の観点から、国土交通省のi-Constructionや日本建設業連合会の生産性向上推進本部など、新たな活動が開始されていますが、産官学一体となった土木学会もこのような課題に、積極的に取り組まなければならないと思います。

今年4月に「現場イノベーションプロジェクト〜次世代に繋ぐ生産現場のあり方〜」と題する会長特別タスクフォースを立ち上げました。もう少し現場に目を向けて、次の若い人たちに受け継ぐべき生産現場のあり方を、学会の立場で検討しようというものです。

私はこれまで30年近く現場を歩いてきた人間です。私のような経歴の者が土木学会会長に選ばれたのも、もっと現場のことに目を向けようという思いが広がっているからではないか、とも考えております。もう一度、担い手の確保や生産現場のあり方について考えていきたいと、今決意を新たにしております。

今回のタスクフォースでは、3つのテーマを検討します。

まずは、土木の基本であるコンクリートの生産性や安全性の向上です。プレキャストの積極的導入などについて、コンクリート標準示方書の改訂に反映することも視野に入れて、考えていきます。

2つ目は、今注目されているIT化やロボット化です。担い手減少対策や生産性向上対策として取り組むのはもちろんですが、個別の技術を導入するだけでなく、得られた情報を蓄積、活用し、構造物カルテやビッグデータとして、国土の安全安心に結び付けていきたいとも考えています。

3つ目は、若手、女性、シニアを含めた担い手確保、また、ロボットやIT分野を含めた土木界の裾野拡大です。特に、このテーマについては、本部だけの活動では限界があり、現場に近い支部の方々にもご協力をいただきながら、取り組んでいきたいと思っております。100周年を機に深まった本部と支部との関係をしっかりと強化・継続していくことが非常に大事です。

土木の原点である生産現場に目を向けながら、国土の安全安心確保は、我々土木技術者が担うべき大事な役目との思いを共有し、そして、その先頭に立つのが土木学会であるという認識を持って、土木学会会長として務めてまいりたいと思っております。

皆様のご支援をお願い申し上げ、私の挨拶とさせていいただきます。


Last Updated:2016/06/20