2000年3月31日有珠山噴火土木学会緊急調査(火山工学委員会速報)

(株)環境地質  稲垣秀輝

 

1.火山活動による被害状況

今回の火山噴火直後の緊急調査では、火山噴火が続いていることにより、噴火口周辺の被害が最も集中している地域には近付けなかった。

したがって、火山活動による被害調査は立入りのできる噴火口より、約5q以上離れた火山周辺地域に限られた。以下にその概要を示す。

 

1)噴火口の近くの地域では火山噴火や溶岩ドームによる地殻変動に伴い、住宅,道路等の構造物や農地,河川等に甚大な被害が発生している。その被害状況は次のとおりである。

@火山性地震による構造物の変状被害

A火山性地震による斜面崩壊

B火山噴石による構造物の破壊

C火山灰による農業,林業被害

D溶岩ドームの隆起による地表の隆起や変形による構造物等の被害

E泥流の発生による河川沿いの被害

ただし、今回の調査では立入りができなかった為、詳細部分は噴火鎮静後に行う必要がある。

 

2)噴火周辺の地域では次の被害があるものの、噴火の規模が比較的小さく、被害の程度が軽微であった。

@火山性地震による構造物の変状被害

a)道路盛土部でのクラックの発生と押し出し(すべりには至っていない)

b)道路切り盛り境界でのクラックの発生

A火山性地震による斜面崩壊

a)急斜面で小規模なもののみ

B火山灰による被害

火山灰の厚さが数o以下であり、大きな被害はでていない。河川においても泥流の発生はなく、河川の濁り程度である。