実行委員長挨拶

土木学会 平成18年度 全国大会を迎えて

−「土木のグローカリゼーション 〜世界市民になろう〜

松下 綽宏

松下 綽宏
正会員 全国大会実行委員長
(株)神戸ハーバーランド情報センター

 平成18年度の土木学会全国大会が,来る9月20日(水)から22日(金)の3日間,草津市にある立命館大学びわこ・くさつキャンパスをメイン会場とし,講演会や交流会の一部の行事は,近くの大津プリンスホテルで開催することになりました。

 関西での大会の開催は1998(平成10)年に神戸大学で開催されて以来8年ぶりですが、最近の関西は、「産学民官」の様々な分野で、一時期の停滞から、再生へ向けての活気・元気を取り戻しつつあり、今回の大会が時宜を得たものとなることを喜ばしく思っております。
大会のメインの会場である立命館大学,びわこ・くさつキャンパスは,日本で一番大きな湖である琵琶湖の南東に位置し,滋賀県が整備を進めている「びわこ文化公園都市」の一画にあります。このキャンパスは,1994年に開設された新しいキャンパスで,理工学部,情報理工学部,経済学部,経営学部などに在籍する約1万6千人の学生が高度に整った教育環境の中で勉学に励んでいます。大会でも充実した時間を過ごして頂けることと思います。

 今年度の大会のテーマは「土木のグローカリゼーション 〜世界市民になろう〜」としました。最近,グローカリゼーションという概念が,経済学や人類学をはじめてとして様々な分野で注目されています。グローカリゼーションとは,グローバリゼーションとローカリゼーションを組み合わせた言葉で,「ローカル性を活かした活動を行い,それをグローバルに発信する」ことを意味しています。すなわち世界規模的な活動が脚光を浴びる一方で,地域性を活かした地域主体の活動を創出していくことにより地域が自立し,世界に向けて発信していく活動と捉えることができます。
今回の大会ではグローカリゼーションの土木的な展開を提案します。インフラは,本来その地域の一部として人々の生活や活動を支えるものであり,その地域の歴史,文化,宗教,習慣を始めとするローカルアイデンティティ−をふまえた形で整備が行わなければなりません。この考え方のもと今回の大会では,これまで日本が長年培ってきた持続可能なインフラ整備に関する知見をベースにしつつも,その地域のローカルアイデンティティーをふまえた国際貢献の在り方を技術支援,人的交流,教育などの多様な側面から見直すことにより世界市民の一員となることを目指すことを提案します。今回の全体討論会では,このテーマに関して,様々な視点から見識豊かなパネリストに話題提供をいただき、コーディネ−ターを交えて討論を行うとともに,それを受けてFCCによる大会テーマに則したフリーディスカッションを開催する予定です。
さらに,大会会場が琵琶湖のすぐ近くということもあり,土木技術者の創造性を培い,交流を深めることを目的として,コンクリートカヌーのポスターセッション,カヌー展示及び競漕会(競漕会は9月23日(土))も開催する予定です。 こちらの方も是非ご参加ください。

また,メイン会場周辺には,オランダ人技師のデ・レーケ指導の基に作られた鎧ダム,日本三代名橋と讃えられていた瀬田の唐橋,明治に作られた南郷洗堰からその任を受け継いだ瀬田の洗堰,琵琶湖の自然を活かした水生植物園を始め,土木に関係する多くのモニュメントがあります。大会の後,是非訪れて頂きたいものです。

 関西支部では,上述の内容を含め,現在大会が有意義で実りの多いものとなるよう,様々な企画について鋭意準備をすすめているところです。一人でも多くの会員に会場にお越しいただき,学術・技術の研鑚を積んでいただくとともに,交流会やコンクリートカヌー競漕会などを通じて会員相互の交流や親睦を深めていただくことを祈念して,挨拶といたします。