令和三年度土木学会全国大会 Japan Society of Civil Engineers 2021 Annual Meeting

実行委員長挨拶

挨拶 令和3年度土木学会全国大会を迎えて

令和3年度土木学会全国大会実行委員長 若林伸幸

令和3年度土木学会全国大会実行委員会

委員長若林伸幸 国土交通省関東地方整備局長

これまでも、これからも生活経済社会の礎を築く土木〜市民と連携し、インフラのビッグ・ピクチャーを描こう〜

 令和3年度の土木学会全国大会は、関東地方では平成25年の開催以来8年ぶりに、9月8日(水)~ 9月10日(金)の3日間、東海大学湘南キャンパスがある神奈川県平塚市で開催される予定でした。しかし、新型コロナウイルスの感染の蔓延が続いていることから、9月6日(月)~ 9月10日(金)の5日間、昨年度の全国大会と同様にオンライン形式で開催することとなりました。今回は、ライブ配信による発表・質疑応答とするなど、会員の皆様との双方向のコミュニケーションを確保する形でのオンライン開催となります。 大会会場となる予定であった東海大学湘南キャンパスは、神奈川県平塚市に位置し、起伏に富んだ約54haの広大で緑濃い自然環境の中にあります。東海大学は1942年に創立され、大学で生まれた「知」を社会に還元することを理念とし、産官学連携による研究活動に積極的に取り組んでいる大学です。理工系から情報系、人文・社会系、スポーツまで文理融合型総合大学で、湘南キャンパスには多様な11学部、大学院が併設されております。キャンパスの北側には大山をはじめとした丹沢山系、西側には世界遺産に登録された富士山が望めます。キャンパスの南側近くには湘南の海が広がり、また観光地の箱根も近く、多くの参加者が湘南に集うことを関係者一同楽しみにしていました。今回は残念ながらオンライン開催となりますが、オンラインの映像などを通じて、当地の雰囲気を少しでも感じていただければ幸いです。

 さて、本大会は、平成23年の東日本大震災からちょうど10年目に開催されます。東日本大震災は、広範囲かつ甚大な被害をもたらしましたが、その復旧・復興に「土木」の力が遺憾なく発揮され、インフラ整備は着実に進捗しました。一方、この10年間で、平成28年の熊本地震や平成30年の北海道胆振東部地震、令和元年の千曲川等が決壊した東日本台風、令和2年7月の球磨川等が氾濫した豪雨など、全国各地で大規模な災害が発生しています。今後、首都直下地震や南海トラフ地震などの発生も想定され、「土木」技術者がこの脆弱で災害の多い国土に対し、引き続きハード・ソフトの両面で立ち向かうことが必要です。また、我が国のインフラは、今後、建設から50年以上経過する施設の割合が加速度的に増加する見込みであり、産官学が連携して持続可能なメンテナンス技術や体制の確立が求められています。
こうした中、政府は昨年12月に「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」を閣議決定しました。5年間でおおむね15兆円程度を目途にして、重点的に国土強靱化に取り組むこととしています。 本大会のテーマは、「これまでも、これからも生活経済社会の礎を築く土木」としました。市民生活や経済活動において、河川・道路・港湾・鉄道・空港等あらゆるインフラの基礎となっている土木事業は、従前からも、また将来においても地域の安全・安心や、雇用・経済を維持するために必要不可欠なものです。サブタイトルでは、「市民と連携し、インフラのビッグ・ピクチャーを描こう」と皆さんに呼びかけています。人口減少・少子高齢化、経済再生・脱デフレ促進、国土強靭化など、時代の要請に対応したインフラの整備・保全を進めていくためには、長期的な視野に立った全体俯瞰図(ビッグ・ピクチャー)を市民の理解や協力を得ながら策定しようというメッセージが込められています。谷口会長による基調講演「これからの暮らし、経済とインフラのビッグ・ピクチャー ~開かれた魅力溢れる土木学会を目指して~」では、今回のテーマに込められた思いが皆さんに伝えられるものと期待されます。土木技術者の目指すべき方向を考える絶好の機会であり、会員の皆様とともに、その実現に向け努力していきたいと思います。

 本大会では、特別講演として、涌井史郎氏(東京都市大学特別教授・造園家)による「持続的未来を確かにするグリーンインフラへの展開」、梅澤和夫氏(東海大学医学部救命救急医学)による「災害派遣医療現場及び新型コロナ感染症の現状」について講演いただく予定です。また、全体討論会では、新型コロナウイルスが社会に及ぼした影響や新しい生活様式、市民との協働などを考慮した上で、今後のインフラのビッグ・ピクチャーと社会に果たすべき役割について、コーディネーターと5人のパネリストで議論します。また、オンライン見学会として、令和元年の台風19号で被災した箱根登山鉄道及び国道138号の復旧までの状況を現地での事前収録動画等を用いてオンライン配信する予定ですので、楽しみにして下さい。 また、近年、建設現場の生産性向上や魅力アップを目的に、インフラ分野におけるデータとデジタル技術を活用したDX(デジタル・トランスフォーメーション)が強力に推進されています。本大会においても、多くの論文が報告されており、数年後には、土木技術者がDX技術を当たり前のように習得しているものと期待されます。さらに、インフラのメンテナンスをはじめ、地方自治体の土木技術者が取り組む地域独自の課題について、幅広い分野の方々で議論する共通セッションを開催します。多くの皆さんの参加を期待しています。 本大会は、オンライン開催となりましたが、全国から多くの学会員が参加し、大会を通して最新の研究に触れ、研鑽を積み、令和の「土木技術者」として新たな時代を築く1ページとなることを願っています。