土木学会は、平成20年7月18日の理事会で決定された公益法人改革への対応の基本方針「本年12月1日から施行される新しい公益法人制度において、土木学会は、その活動目的を継続的かつ一層効果的に達成していくために、平成21年度を目途とし、公益社団法人への移行を図る。」に基づき、公益目的事業明確化のための事業の整理・再編成、定款・細則等の変更の検討、申請書類の作成等の準備作業を進めています。
以下、基本的な考え方、経緯及び今後の手続きをご紹介いたします。
土木学会は、土木工学の進歩、土木事業の発達及び技術者の資質向上を通じて社会に貢献することを目的に活動する、文部科学省認可学術団体(社団法人)です。現在の会員は、学生会員を含めて約3万8千人で、大学人のほかコンサルタント、建設業、官庁、その他の技術者・研究者から構成されています。現在の年間の予算規模は、約15億円(平成20年度)であり、収入に関しては、総収入から管理費以外の経費を差し引いた粗利ベースで見ると、収入の約75%を会員の会費に依存しています。他の収入源は、出版事業、講習会などの行事、受託事業などです。
主な活動は、各種委員会による調査研究活動及び委員会活動の一環としての講習会・シンポジウムの開催、さらにはその成果の公表のための出版、研究成果発表・情報交換のための論文集や土木学会誌の発刊、あるいは土木に関する出版物その他の情報収集と供覧を行う図書館事業などです。また、臨機の対応になりますが、地震や水害などの災害時に緊急調査団を派遣し復旧への提言などにつなげる事業、裁判における鑑定人の推薦なども重要な事業となっています。
技術者の資質向上に関しては、日常的な講習会・シンポジウムによる技術の研鑽のほか、技術者の生涯に渡る技術力向上とその評価を社会に示すことを目的として、継続教育と一体となった技術者資格制度を実施しています。
このような活動は、東京の本部だけでなく、国内8支部、さらには韓国、台湾、モンゴル、インドネシアなど海外の分会における活動としても展開しています。
社会基盤施設の中心を構成する土木施設は、出来上がってしまうと空気のような存在となり、その維持管理や造ることの困難さなども忘れ去られてしまう傾向があります。今後、国内の少子化、人口減少、国際競争の激化の中、わが国社会基盤の戦略的な整備に向けて、その下支えとなる土木工学の発展と、あるいはこれらに深い関わりを有する土木技術者の資質向上のため、土木学会の役割は重要性を減ずることはありません。特に、地域レベルで見た土木施設のあり方を議論することが求められており、支部の活動をさらに強化することも重要です。
土木施設の整備は、官を中心とする発注者、コンサルタント、ゼネコン及び大学等関係者が適正に連携・機能してはじめて建設・管理・運営されるものであり、多方面の関係者の携り方の点で一般の工業製品と大きく異なります。その意味でも、各界の専門家が集う土木学会は、土木工学の研究や技術者の資質向上などの活動を通じて、的確な計画、設計・施工、維持管理、あるいは運用の技術などに関するトータルとしての最適化とその進歩のため、今日まで重要な役割を果たしてきており、今後も期待されていると考えています。