■円上寺隧道の周辺状況
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・旧島崎川は信濃川の増水時に背水で逆流が起き洪水被害が生じたという
・沼地であったという円上寺潟は、干拓による水田化はおろか集落形成すら叶わなかった
・分水附帯工事により『円上寺隧道』が完成し、円上寺潟の“悪水抜き”も実現し美田となった
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■新島崎川の治水履歴など
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「ふるさとの百年・三島 (新潟日報事業社)」より引用
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『新潟県産業遺産の旅(新潟日報事業社)』より図を参照し作成
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① 干拓前の円上寺潟 ②江戸期の間歩堀 ③大河津分水開削が中止 ④明治16 年頃の須走川開削 ⑤明治36 年頃の東部組合悪水路(隧道は廃坑) ⑥大正2 年着工同4 年竣工の円上寺隧道 ⑦昭和43 年新円上寺隧道完成 ⑧大河津分水路完成後に広がった海岸部の陸地
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■吐口(下流側)隧道ポータルと扁額
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現場打ちコンクリートの冠木門デザイン
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大正2 年起工・大正4 年竣工とある
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■呑口(上流側)隧道ポータルと扁額
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総コンクリート造だが石模様が施されている
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隧道の完成を祝し「惟徳被生民」とある
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■建設当時の工事設計書・竣功図
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地蔵堂工場で混凝土塊が製作される
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現場打ちCo造ポータルと円形の水路断面
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■災害復旧や補修により懸命に維持されてきた覆工
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参考:折渡トンネル(土木学会附属土木図書館デジタルアーカイブスより)との覆工の比較
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・『円上寺隧道』を百年前にどうやって造ったのか?現代の土木技術者をも惹き付ける魅力がある
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■オリジナルの覆工を外郭に残しつつ自立管工法で補強
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・現代の土木技術者たちが、更なる長寿命化に挑戦し続ける
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■底設導坑掘進「新墺(オーストリア)式」
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円上寺隧道オリジナルの残存部
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(参考文献)
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 図-2 新墺式による掘進の例(丹那トンネル:平山復二郎, 山岳トンネル全より)
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 〔図はトンネルの上半部のみを示している〕
図-5 組立式拱架(アーチセントル)の例
(丹那トンネル:丹那より隧道工事誌より)
※当時の資料(左写真)から、アーチセントルの鉄トンボ・ボールト・ナットの使用が確認できる
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・『円上寺隧道』はシールド工法ではないが円形セグメント覆工となっていて、シールドマシンを使用せず山岳工法によりどうやって底部までセグメントを嵌合できたのか謎である
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■位置図1(長岡市全体)
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■位置図2(寺泊地域)
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■参考1([本邦最古の現場打コンクリート]である旨の確認について)
【本邦最古のコンクリート造水路トンネルとする理由】
大正2年に着工し同4年に完成した円上寺隧道は、山を掘って貫く山岳工法の総コンクリート製トンネルとしては日本最古級と認識しています。これを立証するだけの資料がない(または探しきれない)ことから推測の域をでませんが、当時はまだレンガや切石が材料の主流であったため、山を掘進し全てコンクリートでトンネルをつくったのは円上寺隧道が国内初だったと考えられます。また、これは土木学会「土木史研究委員会」による土木遺産調査で、コンクリ製で国内最古(道路は松坂隧道、水路は円上寺隧道)だと報道されたことがあります。 [2009 年4 月5 日徳島新聞]
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■参考2(完成以降の改変状況の詳細及び改変による評価について)
■完成以降の改変状況の詳細
○隧道ポータル
・推薦書に記載したとおり、改変履歴や修繕跡が確認できないことから改変されてない。
○トンネル覆工
・完成時の写真や古い改変後の写真は現存していない。(河川法指定前の履歴に係る書類無し) ・把握している改変状況を下表に示す。
・昭和58年以降、災害等を起因に復旧した全断面掘削巻立箇所、インバート部掘削巻立及びアーチ側掘削巻立の実施箇所の資料が現存していないため、補修箇所の重複等がない前提で最大440m弱は改変された可能性がある。(約1200m中の約440m ⇒ 約36%程度の改変)
・近年の老朽化に伴う補修は下図及び写真のとおり、オリジナルが現存させたまま補修を実施する工法(自立管工法)を用い、延命化を図っているため、改変と捉えていない。
■改変による評価の影響について
○隧道ポータル
・全ては残存しているため、評価に影響はないと考える。
○トンネル覆工
・災害復旧等で一部が改変されたものの、延長の半分以上はオリジナルが残存していることに加え、老朽化対策により自立管工法で補修した箇所も対策工の外側にオリジナルが残存しているなど、その大部分が残存していることから、評価に影響はないと考える。むしろ、建設後100年以上経過し、老朽化が進行した施設を活かしながら補修し、現役で活躍していることは評価できると考える。
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[トンネル覆工補修履歴]
施工時期 |
改変の可能性 |
単位:m |
施工時期 |
改変なし(オリジナル残存) |
単位:m |
S58.10 |
全断面掘削巻立 |
50.5 |
H30~ |
表面保護工 |
288.0 |
〃 |
インバート部掘削巻立 |
49.0 |
〃 |
レジンコンクリートパネル工 |
92.0 |
S61.10 |
全断面掘削巻立 |
75.2 |
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〃 |
インバート部掘削巻立 |
100.2 |
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H1.10 |
アーチ側壁掘削巻立 |
163.4 |
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合計(最大値) |
438.3 |
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合計 |
380.0 |
※全延長約1203m
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[表面保護工]
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標準横断面図[オリジナルの覆工の内側に被覆]
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着手前・完成写真
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[レジンコンクリート工](自立管工法)
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標準横断面図 [オリジナルの覆工の内側にパネルを設置]
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施工状況写真
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