公開シンポジウム 「よみがえれ砂浜 --砂浜再生のための方策--」
- 日時:2001年11月17日(土) 14:00-17:00
- 場所:静岡県清水市港湾会館清水市日の出センター(清水マリンビル)大会議室
- 参加者:約100名
- 14:00-14:35 佐藤愼司 (東大)
- 海岸保全中長期展望検討小委員会の目的および過去の検討内容について説明
- 14:35-15:30 喜岡 渉 (名工大)
- 静岡・清水海岸について、砂浜復活を目指しての中長期展望について説明
- 15:50-17:00 総合討論 司会:青木伸一 (豊技大)
総合討論冒頭での話題提供
- 東海大学海洋学部 佐藤武氏
- 三保半島の砂浜の変遷に関する空中写真の紹介
- 三保の松原の文化的重要性、特に景観について、海岸管理者は十分認識して侵 食対策等を進める必要がある。
- 侵食実態の本質を十分議論したうえで合意形成することが重要
- 技術的には養浜が不可欠
- 清水海岸が消波ブロックで覆われた海岸にならないように知恵を結集する必要がある。
- ミズウオの生態の紹介
- 幻冬舎社長 見城徹氏(清水出身) による砂浜に関する新聞記事の紹介
- サーフライダー協会 上田真寿夫氏
- サーフライダーとして、海岸の環境保全にいろいろな面で協力。例えば、重油 回収、ゴミ回収など。
- 利用者からみた砂浜の重要性
- 全国・国際ネットワークを通じた活動を展開
- 立場はさまざまであるが、砂浜を守りたいという思いは皆同じである。
- 防護に対する対処を急ぎすぎて失敗している海岸もある。
- 小中学生に対する啓蒙教育も重要。出張授業の実施。
- 海岸に構造物を作ることに対しては、デモンストレーション等で抗議し、一般 の人に理解を求めてきた場合もあるが、現在ではいろいろな場を利用して、自
分たちの意見を知ってもらうようにしている。また、その中でいろいろな立場 の人と議論するようにしている。
参加者からのご意見と議論
- 清水海岸の離岸堤式ヘッドランド直下手で局所的な侵食が深刻である。養浜を実施してもすぐに流出して、効果が無いようにみえる。抜本的な侵食対策を実施して欲しい
- 局所的な視点だけでなく、広域的・長期的な視点で考えることが重要
- ヘッドランドを導入しなければ清水海岸のすべての浜が消失する
- 養浜した土砂は投入場所から流出しても下手側砂浜を維持するのに役立っている
- 本来は、漂砂の最も上手側、すなわち安倍川河口付近に養浜すれば、それが 順次下手に流され、沿岸の侵食に役立ち、効果的であると考えるが、現在は
それでは間に合わないので、侵食している個所に養浜せざるを得ない。
- 砂防の実務に携わる人と海岸保全に携わる関係者の間で土砂問題に対する共通の認識はあるのか。
- 山から海までの流砂系で総合的に土砂を制御することの重要性は十分に認識 されている。
- 砂防ダムにもオープン形式のもの
が採用されるなど「平常時の土砂を流す」努力が実施されている。
- 「侵食には養浜を」をコンセンサスにする必要がある。
- そのためには養浜工に関
する技術開発を急ぐ必要がある。
- 安倍川からの流出土砂は東へ輸送されているのに、さらに人工的に輸送する必要があるのか。
- 清水海岸の浜を維持するために現在必要なのは礫・小石である。一方、 静岡海岸で離岸堤背後に徐々
に堆積しているのは砂であり、礫や小石が堆積するようになるにはさらに時 間がかかると予想される。安倍川から供給される礫や小石が清水海岸に到達
するようになるまでの間は人工的な輸送を継続する必要がある。
- 砂浜の侵食対策には流砂系全体の総合土砂管理の視点が重要で ある。静岡・清水海岸で過去に実施された緊急対策の妥当性も検討する必要 がある。
- 清水海岸の保全に小突堤を用いることはできないか。
- 急勾配の海岸なので短い突堤では効果がない。
- 基礎マウンド部をきちんと施工すれば使えるのではないか。
- 地形変化が激しいので難しい。久能海岸には昔は沖合いで子供が立てるくら いの沿岸砂州があったが今はなくなっている。この点からも地形変動の激し
さがわかる。
- 地元の方々はいろいろな意見をお持ちと思うが、それぞれのご意見の実現可 能性を是非土木技術者に相談してほしい。
- 羽衣の松前面の海底谷に土砂が落ち込んでいると説明されているが、海底の状況をきちんと調査しているのか。
- 羽衣の松の前面の谷に落ちた砂を再利用できないか?
- 落ち込む谷は深く、砂も薄くひろがっていることから、そこから効率的 に砂を回収することは困難と考える。
- 安倍川での砂利採取が禁止されて以後、下流部の河床高さは徐々に回復しており、海岸への供給土砂量もほぼ回復している。海岸の地形を維持するために必要な土砂量を考えると,安倍川からの流出土砂量の
4分の1 程度を海岸に回せれば良いのであるから、砂浜の再生は可能である。
- 「侵食波」・「堆積波」という用語は適当か。
- 海岸工学の分野では、侵食・堆積域が下手側へ伝播していく現象に対して 「侵食波」「堆積波」という用語が用いられている。「SAND BODY
の移動」、と 呼ぶ人もいる。
- 物質の実質的な移動を伴う現象を「波」と呼ぶのは不自然では。
- 孤立波のように物質の移動を伴う波もある。
- 砂の動きを皆が理解するにためには、このようなシンポジウムが有効である。海岸をブロックで覆ってきたことは、砂浜海岸を岩石海岸に改変してきたようなものであり,本来の自然と共生する海岸の姿を取り戻すためには、砂浜を復活させる必要がある。もし成功すれば歴史的に価値のあることと考える。
Strategy on Beach Preservation, Coastal Engineering Committee, JSCE,
2001-11-17