論文番号
100著者名 池野正明・清水隆夫・田中寛好・今井澄雄
論文題目 実規模不規則波砕波帯内における浮遊砂フラックス
討論者 五洋建設(株)清水琢三
質疑
自由長周期波制御法と従来の造波法とで,砕波帯内の浮遊砂フラックスの長周期成分の大きさと向きが異なることを強調しているが,ケ−スL5とL6の地形変化を見る限り,ほとんど差異はない.浮遊砂濃度の測定精度の方に問題があるのではないか.多くの観測結果を積み重ねて評価すべきであろう.
回答
討議者は,ケ−スL5とL6の地形変化を見る限り,ほとんど差異はないとのことですが,詳細にバ−形成点の位置に注目してみますと,自由長周期波制御法の方が従来法よりもやや沖となっています.これは,自由長周期波制御法による底面付近の浮遊砂フラックスが従来法のものよりも,沖向きに卓越していることに起因すると考えられます.
本論文を投稿した時点では,自由長周期波制御法と従来の造波法とで,浮遊砂フラックスの長周期成分の特性に関して直接比較できるケ−スがL5とL6の一組しかありませんでしたので,討議者のようなご質問が生じると思います.
その後,本論文に掲載した大型造波水路海浜変形実験の縮尺を1/5にして,中型造波水路で室内海浜変形実験を実施し,さらに多くのケ−スで自由長周期波制御法と従来の造波法とで浮遊砂フラックスや地形変化を比較検討しています.
これによりますと,本論文と同様の結論となっており,やはり両造波法では,厳密には浮遊砂フラックスの長周期成分の特性に違いが生じ得ると認識された方がよろしいかと思います.
さらに,本論文に掲載したケ−スL5とL6は,海底勾配が1/10と比較的急なため,砕波帯の長さがそんなに長くありません.室内実験では,海底勾配が1/20で砕波帯の長さが上記より長くなるケ−スでも比較検討しています.これによりますと,砕波帯の長さが長くなる方が,長周期波の発達を促進し,両造波法の差異が海底勾配1/10のケ−スよりも顕著となる結果が得られています.これらについては,近日中に電中研報告として印刷される予定ですのでご参照ください.