論文番号 149
著者名 山本 吉道、山路 功祐、浅野 剛
論文題目 越波計算における波の波群性とその工学的な評価法
訂正と補足
P742の右下から18行目の「=Hb/」は「=Hb/2」です。
P742の右下から17行目の「=Hb/6」は、砕波帯内の水位変動が正弦波でないことから、海底勾配≧1/10に対する数値計算結果が良く合うように補正した値です。
討論者 木村 晃(鳥取大学教授、社会開発システム工学科)
質疑
戻り流れと波の不規則性・分散性が遡上波に及ぼす影響を重要視すべきでないか。
回答
私の考えは土木学会論文No.503/・−29,pp.109−118で発表したとおりで、上記の重要性は認識しております。すなわち、海の波は孤立波でもなければ規則波でもなく、図−Aに示す沖波のような波群性を有する不規則波であります。そして、個々の遡上波を考える場合、より大きな波が先に遡上する場合には、強い戻り流れによって次の波の遡上は強く押さえられ、より小さな波が先に遡上する場合には、次の波はあまり押さえ付けられず、高く遡上出来ます。また、個々の波の遡上速度が違うために、遡上波の間で吸収または追い付き現象が生じて、遡上波の波数が減じると共に、遡上高の統計値が高くなる場合もあります。したがって、規則波の算定値そのものや、これを確率分布関数を用いて合成した程度では、これらの現象を正しく再現出来ないのは自明であります。
ただし、個々の波の戻り流れや分散性の影響が強く効いてくるのは、砕波帯内の海底勾配が急な場合であると考えております。なぜなら、 論文p742の平均遡上高を扱っている図−1に示されますように、海底勾配が緩くなるにつれて、規則波による遡上高は過小評価される傾向にありまして、この間の海底勾配と遡上波形の関係を調べてみますと、図−Aに示されますように、個々の遡上波の影響は、海底勾配が緩くなるにつれて小さくなり、波群に対応した長周期波(surf beat)の影響を強く受けたものに変わってきています。すなわち、個々の波は海底勾配が緩くなるにつれて、より沖合で砕波し、その遡上波はますます小さくなりますが、長周期波は破砕して勢いを殺がれることがあまり無い状態で遡上するため、相対的に重みを増していき、長周期波の影響を考慮したモデルが適用出来るようになってきます。しかも、観測結果によると、海底勾配の緩い場合の長周期波は波群の周期と同位相であり、個々の波が大きくなっている時に、長周期波による水位も高くなっています。
なお、工学上、重要な量は平均値よりも有義値であると考えて、論文中の図−3,4,5は有義値で示しました。
図−A 海底勾配と波形変化の関係
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討論者 井上 雅夫(関西大学教授、土木工学科)
質疑
越波計算方法について、何か検討していますか。
回答
海底勾配が緩い場合の越波は、長周期波による水位が静水位より高い時に集中して生じておりますから、長周期波の影響が顕著になる海底勾配≦1/20の場合には、簡便な評価法として、P743の表−1におけるQ1(全期間に渡る平均値)の替わりに、Q1×2(越波している正味の期間にほぼ対応)を用いて検討することが考えられます。実際、表−1のケースの連の長さは3〜15でしたが、Q2/Q1はその倍程度になっています。