論文番号
152著者名 田畑真一、中山哲嚴
論文題目 衝撃砕波作用時の防波堤の壁面に生じる歪みについて
討論者 鈴木高二朗 (港湾技術研究所)
質疑
昨年の海講で、衝撃力と版と中詰砂の相互作用について発表しましたが、その結果によると衝撃砕波力が作用する場合には、版の変形には中詰砂の付加質量を考慮する必要があるということでした。このような付加質量についてはどのようにお考えでしょうか
回答
作用波力と壁の剛性及び背後の土圧の関係であると思います.壁の剛性が作用波力に比較して弱い場合、壁の変位量は壁中央部でかなり大きくなります.変位量が大きくなれば壁背後での加速度が大きくなるので、砂及び水の付加質量が問題となると思います.私どもの実験では、アクリル製ケーソン模型の隔壁の間隔は15cm程度(壁の厚さ1cm程度)であり、かなり剛性が大きくなっています。中詰めなしのときで無次元波圧強度が6.2(実験中最大)のとき、壁の最大撓み量は0.009cmと極めて小さくなっています.波圧が最大値に達する時間は0.007秒で、この間の壁の加速度が一定とすると、その値は約0.37Gとなり、それほど大きくないことがわかります。。このようなことから、最大歪みが発生する時間と最大波圧が発生する時間のズレが顕著に現れなかったものと考えられます.残念ながら、実験では壁背後の土圧、間隙水圧、変位量の計測はしていませんので、このようなことは推測の域を出ません.なお、剛性は模型の方が実際のケーソンより大きくなっています.今後、中詰め砂の付加質量の影響については、静的解析では不可能なので動的解析を行って検討する必要があると思います.
討論者 高橋重雄 (港湾技術研究所)
質疑
1.討論の中で、「ケーソン壁の破壊がブロックや材木の衝突によって発生したのではないか」との意見があったが、これまでの被災ケーソンを調査した経験から、特にこうした衝撃波圧が作用した場合には、ケーソン壁が破壊されることは十分考えられると思う.
2.ケーソン壁が破壊される場合に、ケーソンの側壁(前面の角付近)も穴があいている場合がありますが、そうした事例が漁港の場合もあるのでしょうか。また、その理由はどのように考えられるのでしょうか.
3.ケーソン壁の破壊に対しては、ケーソン内の砂や水の状況、特にふたコンによる密閉度が大きく影響すると思います。密閉度が高くなるとケーソン内の砂や水だけでなく隔壁等を含むケーソン全体の剛性が前面のケーソン壁の剛性を高めることになると思いますがいかがでしょうか
回答
1.私どももそのように考えています。前面に消波ブロックが被覆されている場合でのケーソンの破壊は殆どの場合波力及びブロックの衝突によるものと考えられます。しかし、前面に消波ブロックが無くかつ被覆ブロックの散乱が全くないのにケーソンが破壊されているケースの多くは衝撃砕波による破壊であると思います。
2.側壁よりの隔室部の正面壁及び側壁が全部破壊されている例はありますが、角部のみの被災例は知りません.
3. 高い密閉度はケーソンの強度増加に寄与すると思いますが、残念ながらそれがどの程度なのかについてはまだ充分な検討をしていません.ケーソン内の水、空気の圧縮性を考慮した検討が必要であると思います.