論文番号 153
著者名 藤原隆一・貝沼憲男・興野俊也・石崎崇志・小竹康夫・津田宗男
論文題目 低天端ケーソン堤に作用する波力特性について
討論者 高橋重雄(運輸省港湾技術研究所水工部耐波研究室長)
質疑
1.「合田式は設計公式であり,ある程度誤差を含んでいます.ここで示された波力低減係数は合田式の誤差を評価したものになっていると思います.基準を同じ実験値(標準的な天端高さの場合)にとって天端高さの違いの影響を見たほうが直接的ではないでしょうか.」
回答
1.「標準的な天端高9cmの場合の波力を基準値とした波力比は,天端高が低くなれば受圧面積が小さくなる分波力は低減し,逆に天端高が高くなれば大きくなることが期待されますが,今回の実験結果では付図−1に示すようにアーセル数が大きくなったときに天端高の違いによる影響が顕著になることが分かります.なお,本文中の図−5は,受圧面積の影響を取り除いて見ようとしたもので,平均波力(平均波圧)に換算したものです.このようにすると,h/L=0.1程度のときには相対天端高の減少に応じて平均波力が小さくなる様子がうかがえます.しかし,同じ平均波力を用いても,同じ波が作用したときの天端高による比較を示した付図−2を見ると,必ずしも天端高の減少に応じて平均波力が小さくなるとは言えません.ただし,天端高9cmの場合を基準値として天端高による波力の違いを検討した場合に見られたように,アーセル数が大きい,すなわち周期が長く波高が大きい波が作用するときに,低天端による平均波力の低減が顕著になるようです.
なお,これらの結果を現地に適用するには設計的な考え方も重要となります.波力式は種々提案されているものの,重複波から砕波まで連続して適用可能なものは合田式のみであり,設計の観点からは基準値として合田式を選ぶことが現状では適切と考えました.その結果,通常の防波堤程度以下の天端高であれば入射波のアーセル数によって波力の低減できる範囲を示すことが可能であることが分かりました.
質疑
2.「低天端になればほとんど波圧は低下すると思います.私どもも上部斜面堤(これも一種の低天端堤)の実験で直立壁の上端付近の波圧が低減していることを確認しています.このとき,そこでの鉛直方向の水粒子速度の上昇が波圧低減の原因と考えました.高天端の時に比べると直立壁前面での水位が低くなるとともに,水粒子速度の上昇が波圧低減の原因となっているのではないでしょうか.」
回答
2.「私どもも,低天端になるとほとんどの場合に合田式に比べると波圧が小さくなることを確認していますが,周期が短い波が砕波的に作用する場合には静水面付近の波圧が大きくなる場合もみられます.
水粒子速度は測定していないのですが,周期が長くなって水平水粒子速度が大きくなるような場合,低天端のときに波圧が小さくなっています.直立ケーソンの場合,ケーソンの端部では渦ができるので,これが波圧の低減にも影響していることは間違いないと思います.ただし,上部斜面堤のように強制的に上向きの流れが生じるようなことはありませんので,直立壁前面の水位低下によってある程度の説明が可能と考え,有限振幅重複波理論の4次近似解を用いて考察したところ,堤体直前で生じる重複波高の1/2として求めた見かけの入射波高を用いることで波圧の低減を概ね説明できることが分かりました.なお,このようにして求めた見かけの波高を入射波高として用いることは有限振幅重複波理論から見ると問題はありますが,越波による水位変動量の低減を表す指標としては問題がないと判断し,実務上は波圧低減の原因を前面の水位変動低下に求めてもよいと考えました.
付図1 hc=9cmの波力を基準値としたときの波力比(全面波力)
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付図2 平均波力
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