論文番号 158

著者名 安田孝志・陸田秀実・水谷夏樹・大屋敦嗣・多田彰秀・福本 正

論文題目 トラップ式ダブルリーフの消波機能(1)

討論者 高橋重雄(港湾技研)

質疑

 1.トラップの構造を考えると異形ブロック等でも同様な効果が得られるのではないかと考えられる.

現実的な対応としてはある程度空隙率の大きいブロックを用いることも考えられるのではないか?

回答

 1.図-9に示すように,ジェット突っ込み点付近にスリット構造と同一長さ,水深の約0.4倍の深さの砕石(gravel)構造物を設置した場合の実験も同時に行っている.その結果,砕石よりもスリット構造の方が約20%程度伝達率がさらに低下していることがわかる.また,その他ゴム膜を設置して同様の実験を行ってみたが,砕石構造物同様,トラップ構造ほど効果は得ることが出来なかった.

以上のことから,本研究におけるスリット構造は,砕波後のジェットをスムーズに取り込み,しかもスリット内で十分な撹乱を促し,その後の岸向き方向の再生波発生を制御し流体塊を封じ込める構造となっている.したがって,単に撹乱を発生させる従来の構造物とは異なり,砕波後のジェットの振る舞いおよびそれに伴う流体運動を十分考慮した構造形式となっているため,他の構造物にない著しい特徴を有している.

質疑

 2.潜堤の場合,背後の洗掘が問題となるが,こうした工法で渦の大きさを小さくできるとしたら,大変有効だと思う.この工法のそうした面のデータはないのか?

回答

 2.現在のところそのようなデータはないが,トラップ部内のジェット突っ込みに伴う流体運動特性をトレーサ追跡法により解析中であり,エネルギー散逸および渦度の強さを定量的に評価する予定である.これらのデータを基に,潜堤背後の洗掘に及ぼす渦の影響の検討が可能となる.さらに,実海域に相応しい構造であることを検討するため,トラップ式ダブルリーフの前面および背後の漂砂移動の実験も今後行う予定である.

 

討論者 磯部雅彦(東大)

質疑

 1.トラップ式ダブルリーフによる波浪制御効果の内,波高伝達率だけでなく,波形やエネルギーなどの制御効果についてはどうか?

回答

1.空間波形による比較検討は今回の論文では行っていないが,図-3に示すように,時間波形による比較の結果から,砕波後の波高計W09以降(岸側)において波高低下および流体塊の著しい減少が見られる.また,エネルギーによる直接的な検討は行っていないが,簡易的に波高の2乗をエネルギーと近似すると,これらの時間波形から波高伝達率以上の顕著なエネルギー低下が容易に推察される.以上のことからも,トラップ構造はジェット突っ込みによる流体の撹乱を促し,しかも岸向き方向の流れを制御していることがわかる.今後,スリット構造へのジェット突っ込みによる流体運動と波高減衰,エネルギー低下の直接的な因果関係を検討する予定である.

 

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