論文番号
166著者名 荒木進歩・伊藤禎和・出口一郎
論文題目 動的応答を考慮した捨石防波堤の平衡勾配について
訂正
論文中の図-10にミスがあり,縦軸の値は×10-3ではなく,×10-1が正しい。
討論者 電力中央研究所水理部 榊山 勉
質疑
図-6の衝撃的な波力の作用方向について質問します.空中にあった波力測定点が遡上波により水中に没した瞬間に衝撃的な波力が作用する場合,その瞬間の波力の作用方向が図-6の実験結果では防波堤の法面より上向きばかりです.図-3の水粒子は斜面勾配より小さい角度で運動し,水粒子の楕円軌道の扁平率は0でほぼ直線的な運動をしている,との記述と照らし合わせると,衝撃的な波力が作用した瞬間にかなり大きな揚力が作用しないと法面上向きに合力が向かないことになるものと思えます.被覆材の浮力がこのような現象に影響するのでしょうか.
回答
11月に発表したグラフはデータのサンプリング間隔が適切でないことが分かったので,今回新たに行った実験の結果をお示しします.粒径は1.35cmで,少し小さい砕石を用いております.図-(a)に波力のホドグラフを示しましたが,乱れが大きいこと,また移動平均によりスムージングをかけすぎても衝撃的な波力の特性が失われると思われることから,図-(b)に衝撃的な波力の作用方向のみを取り出してみました.図中Bは砕波を,NBは非砕波を,また点線は斜面勾配に相当する作用方向を表しています.斜面勾配1:2のケースでは斜面よりも大きな角度で作用する場合と,小さい角度で作用する場合があります.このケースでは砕波・非砕波による差は見られません.また,斜面勾配1:3のケースではほとんどのケースで斜面よりも大きな角度で作用しており,非砕波のときは砕波のときよりも大きな角度で作用している傾向が見られます.
実験結果からでははっきりしたことは申せませんが,波力計測点付近で波面が巻き込まれるような砕波が生じた場合には,斜面よりも小さな角度で作用するのではないかと考えております.
質疑
Porous Body Modelの計算条件について,メッシュ間隔Δx=h/36,Δz=h/12,時間ステップΔt=T/100はずいぶん粗い条件ですが,波形は減衰しないで伝播するのでしょうか.
回答
御指摘のとおりかなり粗い計算条件ですが,計算機の能力と計算時間の兼ね合いからこのような条件にせざるを得ませんでした.しかし,計算領域を波進行方向に約2波長分程度としたため波形の減衰は見られず,伝播しております.ただし,十分大きな領域に対してこの条件で計算すると,波形の減衰が見られるかもしれません.
質疑
同じくPorous Body Model中の抗力係数と慣性力係数の与え方について質問します.これまでの研究結果から抗力係数,慣性力係数をPBM用に換算して与えたとの説明を受けましたが,具体的な方法を教えて下さい.
回答
透水層を構成する砕石として,出口ら(1994)の実験結果により透水係数と乱流抵抗係数が明らかである砕石を用いました.そして透水層内の非定常流れに対して,次式の非線形Darcy則が成り立つと考えました.
(1)
(2)
ここに,
qd:断面平均流速,p:圧力,ρ:流体密度,ν:流体の動粘性係数,g:重力加速度,kp:透水係数,Cf:乱流抵抗係数,ε:空隙率,Cm:慣性力係数であります.右辺第
3項が乱れに起因する流速の2乗に比例する項であり,この項の係数Cf/kp1/2は長さの−1乗の次元を持っていますが,近似的にこの係数を抗力係数としました.また慣性力係数については,出口ら
(1994)の実験結果をそのまま用いました.参考文献
出口一郎
(1994):透過性構造物による波の変形,1994年度(第30回)水工学に関する夏期研修会講義集Bコース,B−7目次に戻る