論文番号 17
著者名 灘岡和夫・大野修史・栗原礼
論文題目 波動場の力学状態に基づく砕波過程の解析と砕波条件
討論者 磯部雅彦(東京大学)
質疑
水平床上の極限波で波長角が120度となる理論では,圧力勾配は下に向かって0とならず正になり,この論文の仮定と異なるが,進行波の砕波条件も圧力勾配0とする理由は何か.
回答
古典的な砕波角理論では,鋭角な頂点を有する対称波列の定常的な進行を前提としている.しかし実際の砕波現象は非定常で,波形も前後非対称であり,そもそもこのような波列の実在性に問題がある.このような実現象とは異なる前提を持つ理論で,実際の砕波時の運動状態を議論するべきではなく,この理論で圧力勾配が0にならないことに何らこだわる必要はない.
討論者 武若聡(九州大学)
質疑
数値計算より得られる,砕波が生じた瞬間の流速ベクトル分布,圧力勾配のコンター図,いくつかの位置における鉛直方向の圧力分布の図示を望む.
回答
上下二つの図は,数値計算によって求められた波動場の鉛直方向圧力勾配のコンター,および流速ベクトルを示し,砕波と判定した瞬間(論文中式(6)で表現される圧力勾配の値が0以下になった時点)での状態である.ここで入射波は周期3秒,沖波波形勾配0.02の正弦波で,斜面勾配は1/20である.また波動モデルにおいて流速分布の近似関数は1つである.圧力勾配コンターは,数値計算によって得られる流速u,wを,鉛直方向の運動方程式に代入することにより求めている.
この図を見ると砕波瞬間の圧力勾配が波頂部で-0.2とゼロ以下になっているが,これは今回の数値計算で使用した波動方程式が一成分バージョンすなわち流速分布の鉛直依存性関数を1つだけとしたバージョンであるため,波頂部付近の流速場の再現性が完全ではないことによるものと考えられる.
このように流速場の再現性が完全でないと,砕波の判定に用いている式(6)と,運動方程式を直接用いて得られる圧力勾配が一致しなくなるが,この問題は成分数を増やして流速場表現の精度をあげてやることにより解決可能である.
T=3.0s, bottom slope=1/20
付図: 本研究で砕波点と判定された時点の鉛直圧力勾配および流速の分布
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