論文番号
186著者名 青木伸一
論文題目 超大型浮体の流体力係数に及ぼす浅水影響
討論者 織田幸伸(大成建設,技術研究所)
質疑
浮体の変位に対して微小変位を仮定しているが,これだけ水深の変化によって流体力が変化するならば,浮体変位の有限性の影響が大きいのでは?
回答
ご指摘の通りだと思います.岸壁前面に係留した浮体の流体力係数についても,離岸距離が小さい場合には離岸距離のわずかな変化に非常に敏感ですが,それと同様に今回取り扱った浅水影響についても有限変位の影響があるものと予想されます.ただ,超大型浮体が実際どの程度の振幅で動揺するのかについてよく理解していないので,その影響がどの程度現われるのかはっきりしません.また,実際の超大型浮体を考えると,浮体下の水深が一定である場合はほとんどないわけで,水深変化の影響を考慮する必要があることがわかりますし,底泥などが厚く積もっている場合に,その影響がどの程度現われるのか,なども興味深いと思います.
討論者 大澤弘敬(海洋科学技術センター)
質疑
弾性応答に対する浅水影響については,どのような影響があるとお考えですか?
回答
本論文で検討したのは,流体力係数に対する浅水影響のみであり,ご指摘のように,この影響が浮体の動揺や係留力にどのように現われるかについて考察する必要があります.すなわち,流体力係数の変化が動揺や係留力に与える影響の感度分析をする必要があります.これについては,剛な浮体についてではありますが,著者らが検討したものが海岸工学論文集第41巻(2)p.976-980に掲載されておりますのでご参照いただければ幸いです.ご存じのように,流体力係数は浮体の動揺モードの固有周波数付近でその影響が大きくあらわれ,著者らが検討した結果では,例えば流体力係数における10%の変化が,浮体の動揺に10%以上の変化となって現われる場合もあることが理論的には指摘されています.実際には固有周波数付近ではその他の非線形影響などが効いてくるため一概には言えませんが,詳細に検討しておく必要があると考えます.
討論者 土田 充(清水建設,技術研究所)
質疑
剛体と弾性浮体の流体力の相違について
回答
弾性浮体としてとして取り扱う必要があるかどうか?というご質問だと理解してお答えいたします.これは,超大型浮体に及ぼす外力としてどのようなものを考えるかということと関わりがあると思います.外力の空間スケールが超大型浮体のそれよりも十分小さい場合(通常の波浪など)には,剛体運動よりもむしろ弾性変形が設計上重要になると思います.ただ,それらを動的に取り扱う必要があるのかどうかについては私自身勉強不足でまだよく分かっていません.