論文番号
200著者名 前野賀彦,石川元康,田中克往,東 博之,川本博文
論文題目 現地観測に基づく汚濁防止膜の抗力係数に関する一考察
訂正
1.論文中の式(12)にミスがあり,式中の右辺分子の16Tw/ρwL{T/πH sinh(2πh/L)}2は16πTw/ρwL{T/πHsinh(2πh/L)}2 が正しい.
2.論文中の式(14)にミスがあり,式中の右辺分母のρwu2はρwu2d0が正しい.
討論者 重松孝昌(大阪市立大学,工学部)
質疑
1.抗力係数の算定(整理)に用いた流速は,どの地点の流速か.
回答:東京湾K地区での現地測定では,図−1に示すように膜の設置地点から水平距離約80m離れた固定櫓で測定した流速を用いている.廿日市での現地測定では,膜の設置位置から水平距離約5m離れた位置で,船上より測定した断面平均流速を用いている.ただし,東京湾K地区での抗力係数の算出に際して用いた一部の流速値は,データの欠損により張力と流速の関係(図−4)から間接的に求めた流速の値を用いている.
2.自立式への適応は可能か.
回答
現在のところ,自立式汚濁防止膜に作用する流体力についての現地観測は行っていない.基本的には,流速,張力,および膜の変形の測定ができれば抗力係数を同様に求めることが可能である.自立式の場合,垂下型に比べ波による流体力は小さいと考えられる.機会があれば,現地観測により自立式汚濁防止膜の抗力係数について検討したいと思っている.
討論者 青木伸一(豊橋技術科学大学,建設工学系)
質疑
1.Cdに及ぼす水深(h)と膜の深さ(d)との比d/hの影響は.
回答
d/hが大きい場合には膜下端を通過する流速が増大し,膜の吹かれ高さが大きくなることから,Cdに及ぼすd/hの影響は大きいものと考えられる.また,d/hが小さい場合には水深が十分大きいために膜下端を通過する流速の増大は小さく,Cdに及ぼすd/hの影響は小さいものと考えられる.しかしながら,今回の検討ではd/hの影響は考慮していない.
質疑
2.波・流れの場合,実測において衝撃的な張力は現れるか.
回答
衝撃張力が波力による算定値をはるかに越えた張力と考えるならば,前野ら(1994)の観測においても認められた.波浪中で緊張と弛緩を繰り返して運動する際の緊張時に発生する張力として考える場合には,衝撃張力は時系列データから急激に増加する張力値として与えられるが,実測データの変動張力成分の時系列波形からは顕著なピークを示す衝撃張力は認められなかった.この原因として,流れによる定常張力の発達により係留索が緊張係留状態に達すると弛緩状態が発生しにくく,衝撃張力の発生が減少するのではないかと考えられる.詳しくは,前野ら(1995):汚濁防止膜の各種係留アンカーの実測張力による変位応答特性,海岸工学論文集,第42巻,pp.971-975.,前野ら(1995):汚濁防止膜の重力式係留アンカーの応答特性,海洋開発論文集,Vol.11,pp.217-222.および,前野ら(1994):海洋工事汚濁防止膜の係留アンカーに関する一考察,海洋開発論文集,Vol.10,pp.325-330.を参照されたい.