論文番号 201

著者名 堀沢真人 佐藤典之 大橋裕寿 赤村重紀 坂間 茂 吉倉敬治

論文題目 ケーソン沈設仮定の波浪中挙動

討論者 小林昭男(大成建設()技術研究所)

質疑 

 1.論文集 図-6Swayの応答が計算値と実験値とでは傾向が異なる.一般的に箱形浮体の線形動揺に関する実験と計算はよく一致するということが討論者の認識であるが、本論文の相異はケーソン沈設に関する特有のものであると考えるべきなのか。

 2.図-7において、短周期側ではマウンドの影響を考えても、計算値は実験結果を説明できないと考えられる。この理由は、計算の仮定にあるのか。

 3.図-8(d/h=0.97)において、計算結果には B/L=0.8 で値の低下があり、 B/L>11 で再ピークの傾向がある。これらの実験結果との相異は、どのように説明づけられるか。

回答

 1.実験は三次元であり,マウンド上にあるケーソンの動揺を計測している.それに対し,計算は二次元であり,マウンド天端を海底面とした一定水深として計算している.その意味で,計算は厳密なものではない.しかしながら,両者は概ね一致しており,論文中でも述べているように,三次元影響や海底形状の影響は案外小さく,このような計算によっても推定可能であるというのが著者らの認識である.なお,計算手法は,現場での使用も念頭において,できるだけ簡単にケーソンの動揺特性を推定できるようなものを目指している. 

 2.マウンドとの接触の影響を全く考えない通常の計算に比較して,その影響を考慮した計算結果はより実際の現象に近いといえる(実線が通常の計算結果であり,○がマウンドとの接触の影響を考慮したものである).しかし,それでも実験結果と計算結果にはやや違いがみられる.これは,マウンド影響を近似しているバネの特性やケーソン底面とマウンドとの摩擦の影響を無視している点などに問題があると考えられる.

 3.ROLLモードの固有周期はL/B=9付近にある.その影響で漂流力が急激に変化している.漂流力(反射率あるいは透過率)の計算では,ケーソンの動揺がマウンドによって拘束される影響を考慮していない.ピークの発生位置が計算と実験で異なっているが,このことが原因しているのではないかと考えられる.

 

討論者 多田彰秀(西松建設()技術研究所)

質疑

 1.対象としている現場(常陸那珂港)での波浪に関する作業限界条件(有義波高)でいくらか。

 2.(5)式で与えられる波漂流力の反射率(KR)は、如何なる方法で算出して(5)式に代入しているのか。一定値なのか、時間時に変化するのか。

 3.波高は5cm(現地波高で1m)で水理実験されているが、パラメータとして変化させて検討されているかどうか。されている場合、 -3〜図-8 の結果と定性的に同じような結果になるかどうか。定量的にはどうか。

回答

 1.ケーソン据付の作業限界波高は,H1/3=0.8mT1/3=8秒程度である.

 2.波反射率は,伊藤ら(1972)の方法によって求めた.これにより,浮体の動揺とともに波の場を容易に計算することができる.波反射率が与えられれば,論文中にも記しているとおり,式(5)を用いて,不規則波のゼロクロスからつぎのゼロクロス間を規則波の半周期とみなして,その間は一定の漂流力が作用するとして計算する.すなわち,不規則波中の漂流力は時間的に階段状に変化する力として与えられる(Hsu1970の仮定).

 3.実験は全て波高5cmで実施した.ボトムクリアランスが大きい状態では,波高が異なった場合でも傾向は同じであると考えられる.ただし,Rollは粘性影響が大きいため,波高に比例しない.クリアランスが小さい状態(図-7)では,波高によってマウンドに接触する場合としない場合があるので,当然波高により動揺特性が異なってくる.

 

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