論文番号
238著者名 松永信博・櫨田操・鵜崎賢一・岸岡賢祐
論文題目 強風によって沖合海域から浅海域へ輸送されるしぶき量の低減率について
討論者 二瓶泰雄(東京工大、大学院情報理工学研究科)
質疑
しぶきの径が室内実験と現地観測による結果でどの程度変化するものなのか?
回答
本研究の目的は、沖合海域、浅海域そして沿岸陸域にかけて形成されるしぶき濃度分布を数値シミュレーションにより予測することにある。この場合、しぶきの粒径分布を定量化することが、その沈降速度を評価するために必要となる。
これまで、雨滴の粒径や沈降速度に関する研究例は、気象学等の分野で数多く見られる。また、砕波上の濃度分布や沿岸での飛塩量の現地観測に関する研究数も増えてきている。しかしながら、現地観測において、しぶきの粒径分布を測定した例はほとんど無いように思われる。その理由は、強風下の厳しい条件のもとでないと測定が困難であり、しかも雨を伴う場合が多いこと、また、しぶきの粒径を鉛直方向や水平方向に同時に測定する手法が確立されていないこと、および手間がかかること等が考えられる。
そこで、著者らはまず、現地に比べて測定が容易な室内実験により、波や風速の条件としぶきの濃度分布との関係について検討し、その上で、現地観測を行うことにより、両者を関係づけることを目指している。ここに発表した論文は、内容から分るように、全て室内実験により得た結果であり、現地観測にいついては全く行っていない。そのため、質疑に対しての回答は現状ではできない。しかしながら、沿岸において、砕波、消波ブロックおよび海岸堤防等からのしぶきの発生現象を観察した様子から判断すれば、しぶきの多くは、その発生源にかなり近い範囲で沈降してしまい、沿岸陸域には多くの場合、海塩粒子状
となって飛散し、輸送されるように考えられる。
なお、平成9年度より現地観測を開始する予定であり、今後、成果を得られ次第報告していきたい。