論文番号 241

著者名 八木 宏・緒方健太郎・坂本太郎・灘岡和夫

論文題目 開放性海岸における夏季の水温変動特性

討論者 吉岡 洋(京大,防災研)

質疑

 内部潮汐は間欠的に起こっているがその原因は何か?風との対応,潮位との対応は見られるか?

回答

 本観測で対象とした鹿島灘のように陸棚域を有する開放性沿岸域では,外部潮汐波が陸棚域に侵入する際に水深変化の著しい陸棚端で内部波を励起し,それが内部波潮汐波として広く沿岸域に伝播していると考えられる.したがって,海岸域に押し寄せる内部潮汐の大きさを支配しているのは,内部波を励起する外部潮汐波の大小と内部波が伝播する海域の成層構造であると考えられる.今回の観測結果は,内部潮汐によると考えられる海岸付近の日スケール水温変動が大局的な場の水温構造変化に強く影響を受けていることを示しており,したがって内部潮汐の間欠性は本論文中でも述べた数日スケールの長周期的な成層構造の変化が主な原因と考えられる.なお,風との対応関係については,大局的な場の成層構造を変化させるといった点では関連性があるといえる.潮位については,水温構造の変化にマスクされてか明確な対応関係がみられなかった.

 

討論者 田中昌宏(鹿島技研)

質疑

 岸まで達する内部波は1日周期である機構は?

回答

 今回の観測結果が示すように,内部潮汐波には日周成分と半日周成分があるものの海岸近くにまで到達するものは主に日周成分である.この理由としては,日周の内部潮汐と半日周の内部潮汐の伝播構造の違いが考えられる.最近の著者らの現地観測によれば,半日周の内部潮汐は慣性重力波として沖合いから沿岸部に向かって伝播し,海岸線にほぼ直角に入射・遡上する.これに対して,日周の内部潮汐波は沿岸部にトラップされた波動のように沿岸方向に伝播することがわかっており,このような内部波の伝播構造の違いが海岸付近への影響の違いとなって現れたものと考えられる.日周と半日周の内部潮汐波の詳細な構造の違いについては今後検討する予定である.

 

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