論文番号
250著者名 明田定満・谷野賢二・中内勲・高橋義昭・小野寺利治
論文題目 表面処理の相違によるコンクリート面への海藻着生状況について
討論者 瀬戸雅文(北海道立中央水産試験場)
質疑
凸凹処理コンクリートと処理の無いものでは、海藻着生量に差が出るとのことだが、その理由として、着生時のウニ等の食害が大きいのか、あるいは、生長時の海藻の流出に対する付着力の増大が大きいためなのか教えてほしい。
回答
植食動物であるウニ類を人為的に間引きし、ウニ類の生息密度を海藻群落を維持できるとされる密度以下に、長期間に渡って人為的に管理した現地調査(北海道立中央水産試験場が実施)では、実験開始前にはいわゆる磯焼け状態であった場所に、実験開始後、海藻群落が形成され始め、ウニ類生息密度を管理していた間は海藻群落が維持されたことから、磯焼け対策として植食動物の密度管理の重要性を示唆するものと考えております。また、我々が実施している海藻着生調査においても、ブロック面に着生した付着珪藻を、植食動物(ウニ類等)がブロック面を舐めるように接餌していることを確認しております。
磯焼け海域に設置されているケーソン式防波堤では、水際帯に比較的濃密な繁茂域が生じる反面、それ以深では殆ど海藻の繁茂が見られない。消波工部では、水際帯にあって上方を向いたブロック脚部に濃密に繁茂しているが、ケーソン本体と同様に水際帯以深では殆ど海藻の繁茂が見られない。防波堤における海藻繁茂と植食動物であるウニ類生息密度との関係を調査した結果、海藻繁茂が観察される水深帯は、波浪の影響が強くて、植食動物であるウニ類の活動が難しい水際帯に限定されており、水深が深くなりウニ類が活動しやすくなると、海藻繁茂が急激に少なくなることが分かってきました。
コンブ漁場におけるコンブ着生状況の観察事例を見ますと、コンブは上方を向いたブロックや石材の縁辺部に密生し、縁辺で囲まれる中央部には、”カッパの頭”のように繁茂していないことが観察されます。栄養や光を巡る競争に勝ち残ったコンブが、波浪や流れに対して抵抗するためには、十分に根を張ることの出来る凸凹処理の方が無処理より有利であると考えておりますが、その付着力については計測しておりません。
以上のようなことから、海藻着生量にはウニ類等の植食動物による食害が大きく影響していると判断しております。