論文番号 73

著者名 高木利光、川原睦人

論文題目 モードスプリット有限要素法を用いた準3次元海浜流シミュレーション

討論者 三村信男(茨城大学・工・都市システム)

質疑

 鉛直分布を決める関数形fk(σ)(式(21))はどういう考え方で決めたのか、その力学的根拠は何か。

回答

 鉛直分布を決定する関数形を式(21)のように定めた根拠は、放物型方程式である式(11)の基本解を式(13)のように仮定した場合、境界条件を満たす直交関数として三角関数を用いることは最も自然な選択と考える。

 

討論者 山下隆男(京大、防災研究所)

質疑1

 内部モードの計算間隔は外部モードの何倍くらいにすればよいか、その根拠は何か。

回答

 内部モードと外部モードの計算間隔の取り方については、今回の計算例では10倍として計算している。しかし、その設定根拠は明確なものはなく、計算の安定性から試行錯誤的に設定したものである。実際、平均流からの流速偏差を計算(内部モードの計算)する場合には、平均流速を用いるが、平均流の計算(外部モードの計算)には、内部モードの計算結果は関係ないことから、この間隔をできるだけ大きくとっても問題はないと考える。ただし、今回は最終的に定常解を求める問題であることから、そのような事が言えるが、非定常解を求める場合は、この間隔を大きくとることには問題があると考える。

疑2

 外部モードの海底摩擦の与え方と内部モードの計算結果との関係をどのようにしているのか。

回答

 外部モードの海底摩擦の評価には、平均流速を用いている。したがって、内部モードから求めた鉛直方向の流速分布形を用いていない。この点については、内部モードから求まるところの流速分布形から底面での摩擦を評価することも可能と考えられるが、今後の検討課題としたい。

質疑3

 海浜流の鉛直分布を決めるのは乱れの鉛直分布であり、将来的には乱流モデルを導入されるでしょうが、その場合、乱流モデルの計算時間間隔はどのように設定すれば良いのか。

回答

 乱流モデルの導入については考えてはいるが、その時間間隔の取り方についてまではまだアイデアを持っていない。

 

討論者 佐藤慎司、土木研究所

質疑

 戻り流れの算定には通常、砕波ボアによる質量輸送モデルや砕波下の運動量の鉛直分布の修正モデルが用いられるが、本研究ではそのようなモデル化を用いずに、渦動粘性係数のモデル化のみで説明されている。砕波ボアのモデル化は必要ないのか。

回答

 当モデルは、外力としては従来の定義による微小振幅波理論より導かれるラディエーションストレスを用いている。このモデルではあたかもこのラデイエーションストレスを水面に働く外力として扱っている。これは、信岡ら(海岸工学論文集第43巻、1996)らが、多層モデルで海浜流モデルを提案しており、その中で、「ラディエーションストレスは表層に強く表れること、砕波により波浪の水平運動量束成分がボアによる岸向き流れの運動量束に転化する」としていることと考え方は同様であると考える。従って、砕波ボアのモデル化は特別せずに、戻り流れを含めた3次元的な海浜流が計算可能と考える。

 

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