論文番号 74

著者名 安田孝志・加藤 茂・岩田 宏・佐藤愼司

論文題目 砕波帯沖合い流れの特性とその成因について

討論者 山下隆男(京都大学,防災研究所)

質疑

 1.強風や非線形干渉による風波の砕波による流れ(風のモーメンタムが波浪に受け渡され,それが砕波により流れのそれへと変換されたもの) "砕波流" が強い沿岸方向の流れを引き起こすというのが佐藤愼司さんのイメージであるが,これは波浪の屈折を考慮すると,海岸線に直角になろうとするので,むしろ沿岸方向の流れが,風による吹送流より小さくしようとしている.これで強い沿岸方向の流れが強調されるとは思われない.沿岸方向の流れの発生要因は波のどのような作用によっているのか?

 2.傾斜流(地衡流)の存在を調べたいのなら,風が止まった後にも沿岸流成分が残っているのかどうかを調べたらどうでしょうか?

回答

 1.今回扱っているデータは沖合水深10mおよび15m地点における観測データであるため,波は概ね沖から岸に向かっていますが,完全に海岸線に直角方向にはなっていません.海象条件によって,直角(南東)方向よりもやや東方向を向く波や,反対にやや南方向を向く波が多く存在します(-3 および第42(前回)論文集p432,図-3を参照されたい).この直角方向からのズレが,本論文の中において用いている波の沿岸方向成分 Hs であり,これが流れの沿岸方向成分に関与していると考えています.発生機構の詳細については,まだ,未解決であり,今後の課題であると考えています.

 2. 静穏期も含めて流速データの解析を行ったが,風が止むと平均流も消えることを確認しています.このことから,風や砕波の直接作用が重要と考えています.

 

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