JSCE
土木学会

教育企画・人材育成委員会

平成20年度教育企画・人材育成委員会検討方針(案)


現状認識

 平成19年度に委員会構成を以下のように充実させた。
  1. "教育論文集編集小委員会"を立ち上げ、教育論文集の発刊を強力に推進できるようにした。本年度はこれを"教育論文集編集部会"に格上げし、継続的な論文集刊行を実施できる構成にしたい。
  2. HP部会"を立ち上げ、専門家、一般社会人の両者から見て有効な情報提供をできるようにした。
  3. 従来のプロジェクト1を改組して、"運営部会"を立ち上げ、全体的観点から委員会の活動すべき方向を議論できる場を設けた。
  4. 教育企画・人材育成委員会(プロジェクト2,大学大学院教育小委員会、マネジメント研究小委員会)とコンサルタント委員会(ED教育研究小委員会)に分かれて行っていたED教育に関する活動を、コンサルタンツ委員会と協議し、平成19年9月から、教育企画・人材育成委員会の"エンジニアリングデザイン教育小委員会"として一本化した。
  5. 産業界から、社会が必要とする技術者像、実務者に必要とされる能力などを多様な切り口で整理し、これを大学教育に対する提言としてとりまとめるとともに、行政、建設コンサルタンツ、コントラクター等における技術者の生き方をキャリアパスによって示し、学生に夢と進むべき方向を与えることを目的として、"産業界から見た土木高等教育のあり方に関する検討小委員会"を立ち上げた。
  6. 教育プログラムの開発及び調査研究、最終的には学習指導要領や教科書改訂に資する有益な情報を発信・提供を目指して、文部科学省・教育委員会等との連携を深める場(土木と学校教育会議)作りを目的とし、"土木と学校教育会議検討小委員会"を立ち上げた。
  7. 団塊世代の土木技術者を組織化し、対社会に対する情報発信の場とすると同時に、土木技術者として熟成する機会を共有することを目的として、"成熟したシビルエンジニア活性化小委員会"を立ち上げた。
 以上により、平成20年4月現在の委員会構成は図1のようになり、土木系初等、中等、高等教育、社会人、成熟シビルエンジニアの各世代に対する教育、人材育成に関する検討事項を対応可能な体制を整えることができるようになった。また、土木に関係のない一般学生(特に、初等、中等教育)及び社会人に対する教育体制も同様に整備された。

(a)土木系学生、社会人に対する教育、人材育成と該当小委員会


(b)一般初等中等教育に対する貢献と該当小委員会

図1 教育企画人材育成委員会の構成と小委員会が対象とする教育、人材育成分野


今後の教育企画・人材育成委員会における検討の方向

  1. 土木という学科名称が大学からほとんど消えた現在、土木系学科が目指すべき将来の教育はどの方向にむかうべきか?
  2. 優れた教育と約束された将来の展望が優秀な学生を引きつける切り札であるが、土木系高等教育機関や建設産業界はどのようにして、将来土木への進学を選択肢に持つ学生にこの確信を与えることができるか?特に、ピンポイントの魅力が学生の評価を決定しがちな現在、土木系教育機関はどのような方策で学生の関心を引きつけることができるか?
  3. 建設投資はこの15年で1/2に下がったが、建設産業における実需要は他産業に比較して決して小さなものではない。当面、学生の供給〜需要バランスの調整が問題になるにしても、過渡期を過ぎれば、安定した時代を迎えると考えられる。今後の建設業の方向を見たとき、建設産業界は大学・大学院教育に何を求めるか?一方、建設産業の裾野が限りなく拡大し、専門職業人として産業間の移動も益々欧米並みに活発になると考えられる。多分野に適用できるように基礎力充実を目指した教育が指向されているが、高等教育機関は建設産業界からのニーズをどのように受け入れるべきか?
  4. 国際化と言われて久しいが、国内需要の低迷が顕著になった現在、ようやく我が国の建設業も海外工事の獲得に本腰を入れだしたように見える。15年前に比較して、海外留学生が大幅に増加した現在、海外に通用しうる技術者養成を高等教育の中にどのように位置づけるか?
  5. 高等教育のどの分野に進学するかを選択する前の初等中等教育において、土木の正しい魅力をどのように伝えることが、優秀な学生の獲得につながるか?
  6. 団塊世代の退職が始まった現在、技術の継承を必要としている分野は何か?また、技術継承をどのように行えばよいか?また、土木学会は団塊世代を切り捨てることなく、活動の場を提供できるか?

平成20年度の達成目標

 各部会、小委員会の着実な検討の実施が基本であるが、その上で、今年度の重点的検討項目と達成目標は以下の通りである。
  1. 教育研究論文集第1号を刊行する。教育部門を研究者の研究領域の一つに加えることが、この分野の着実な情報とサイエンスを蓄積するために重要である。
  2. シビルタイム(高専・専門学校版土木学会誌)第1号を発刊する。高専や工業高校学生の情報交換の場を確保し、情報発信できる仕組みが重要である。さらに、今後、シビルタイムの発刊を継続し、将来、土木学会誌の一部として、シビルタイムを発刊できることを目指す。
  3. 学生動向の全国データベースの蓄積をはかる。平成19年度第4回委員会で報告された工業高等学校学生の進学、就職動向に関する実態調査データは、年代別の学生の実態を知る上で貴重な資料である。高専においても、第4次土木教育に関する全国調査を平成19年度に実施し、平成20年度には結果のまとめと報告が予定されている。大学・大学院においても同種の実態データを持つ必要がある。特に、高専からの大学編入や高専専攻科からの大学院修士課程進学が多くなっていることから、高専、大学、大学院を連携した調査の実施が必要である。現在、この調査の実施は大学・大学院教育小委員会の活動予定には入っていないが、どのような調査が必要科の検討は依頼している。この調査を実施するための新規小委員会の立ち上げを検討する。
  4. 初等教育における土木出前講義の組織化
     生涯学習小委員会では、従来、小学校における土木出前講義を実施してきているが、徐々に実績を増やしつつある。しかし、この実施のためには多数の教員の協力が必要であり、現状ではまだ関東の3,4地区程度の小学校との協力に終わっている。一方、平成19年度には国土交通省関東整備局と生涯学習小委員会の協力を開始した。また、地盤工学会等、土木学会と同様の活動をしている学協会がある。これらの学協会に呼びかけて、"総合教育建設系支援協議会"(仮称)を組織し、教育委員会からの要望を一元化し、適切な講義を適切な地域から講師派遣できる仕組みを検討する。  なお、生涯学習小委員会のもともとの役割は、初等教育対応だけでなく社会人教育も含まれていたが、上記の役割に特化するため、これに見合った適当な名称(例えば、初等中等教育学習支援小委員会)に改名する。
  5. JSCE2007に記述されている項目の大部分は既に本委員会の活動計画に含まれているが、市民や行政との連携、協働と社会教育等への貢献(社会的関心事をテーマとした公開シンポジウム開催)については、"成熟したシビルエンジニア活性化小委員会"の活動が関係している以外は特段の計画がない。これに対する有効な取り組みを検討する。
  6. 教育企画・人材育成委員会の検討をより広範囲にわたって展開することは良いこととして、この委員会が検討すべき基幹的な課題(例えば、現在の教育をどの方向に変えるべきか?土木学会として人材育成に関して何をすべきか?等)に対する各小委員会を縦断した検討を実施すべき。これを核に、平成20年度末を目途に、"教育企画・人材育成の現状と課題"と題する報告書をとりまとめる。また、この主要部分を教育研究論文集に紹介する。
平成20年6月11日
教育企画・人材育成委員会
委員長 川島 一彦


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