土木計画学の
多様な分野

　交通は社会生活や経済活動に不可欠ですが，一方で，交通に伴う大気汚染や騒音，振動，温室効果ガスの排出などの様々な環境負荷は大きな問題となっています．このため，人々の交通に対するニーズを満たしつつ，環境負荷を削減する交通システムの実現が求められています．環境的に持続可能な交通（EST: environmentally sustainable transport）は，長期的な視野に立ち，環境的な持続可能性を満たす交通システムの実現に向けた様々な施策を策定・実施する取り組みです．

　ESTのための戦略には，交通需要の減少，自動車利用の削減，代替交通手段の改善，道路網の改善，車両単体対策などがあり，それらの戦略を実現するための手段として，交通施設の整備や車両・燃料の改善を含む技術，管理・制御やサービス水準を含む様々な規制，リアルタイムの交通情報提供から意識啓発までを含む情報，料金施策や課税といった金銭的な手段である経済，の4つの手段があります．例えば，電気自動車の開発や自動車税の減税，バス専用車線の設置やリアルタイムのバス運行情報提供など，環境負荷を持続可能な水準に保つために，様々な戦略と手段をいかに効率的に組み合わせるかが重要になっています．

（山本 俊行：名古屋大学）