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●気候変動対策における緩和策と適応策

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地球温暖化による気候変動対策には緩和策、適応策、気候工学が存在し、特に前二者を組みあわせて実施することが効率的な地球温暖化対策となると考えられている。EICネット(*1)によれば、「緩和策(Mitigation)」とは、時間はかかるものの根本的な解決に向けた対策を行うもので、例えばエネルギーの効率的利用や省エネ、CO2の回収・蓄積、吸収源の増加などの対策が実際に行われている、とされている。一方、「適応策(Adaptation)」とは、対処療法的な取り組みで、その具体例としては、沿岸防護のための堤防や防波堤の構築、水利用の高効率化、土壌の栄養素の改善、伝染病の予防などがあげられる、と説明されている。現状では、施策の中心は緩和策であると考えられるが、相当な緩和策を実施したとしても、将来的にある程度の気候変動は避けられないことから、何らかの適応策を実施する必要も生じると考えられている。 Koetse et al.(*2)は、運輸分野における適応策についてまとめており、その中で緩和策と適応策との関係に関しても触れている。図1は、特定の温室効果ガス(Greenhouse Gas: GHG)レベルに対する適応策レベルと費用との関係を表したものである。縦軸に費用をとった場合、特定のGHGレベルに対して、適応策を実施するのに必要となる費用と残存損害の和が最小となるレベル(図中の(A, B))まで適応策を実施することが望ましい。また、図2はGHGレベルと限界費用との関係を表したものである。縦軸は限界費用、横軸はGHGレベルとなっている。緩和策は、GHGレベルを低くとれば限界費用が高くなり、GHGレベルを高くとれば限界費用が低くなる、すなわち右肩下がりの曲線となる。最適な(適応策費用+残存損害)は、特定のGHGレベルに基づいて作成された図1を様々なGHGレベルに拡張したものである。GHGレベルを高くとれば限界費用が高くなり、GHGレベルを低くとれば限界費用が低くなる、すなわち右肩上がりの曲線となる。最も効率的な地球温暖化による気候変動対策は、緩和策費用と最適な(適応策費用+残存損害)の費用が一致する点(図中のE)で与えられる。すなわちこのGHGレベルに対して緩和策と適応策を組み合わせて実施することが最も効率的となる。


図1 適応策レベルと費用(特定のGHGレベル)(*2)


図2 GHGレベルと限界費用(*2)

参考文献:
(*1) EICネット, http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act= view&serial=3841, 2012
(*2) M.J. Koetse and P. Rietveld, Adaptation to Climate Change in the Transport Sector, Transport Reviews, pp.1-20, 2012
(*3) 室町泰徳他、運輸部門における地球温暖化緩和策、適応策、およびそれらの共同便益に関する研究、公益社団法人日本交通政策研究会、2013

(室町泰徳:東京工業大学)

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