●低炭素型都市・コンパクトシティ
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気候変動(地球温暖化)の主な原因となるCO2排出量を削減するためには,人やモノが移動する際のベースとなるまちづくり自体から環境に配慮していくことも重要です.このようなまちを「低炭素型都市」といい,日本でも低炭素都市づくりが推進されています.
低炭素型都市づくりには,まず,建物の建て替えを進め,それに併せて,例えば,屋根に太陽光発電のパネルを設置するなどして,未利用・再生可能エネルギーを活用し,それによって発電された電力を電気自動車に活用するという,エネルギー分野からのアプローチがあります.また,排出されたCO2を吸収してくれる森林や公園などの緑地を守ること,建物の屋上や壁面に植物を植えること(緑化)といった,みどりの分野からのアプローチもあります.
それと同時に,それらの建物や緑地の配置を変えて土地を効率的に利用しながら自然環境を守り,買い物や病院,職場などの土地利用の用途を混ぜてアクセスしやすくし,それらをつなぐ移動をCO2排出量の少ない公共交通や徒歩で行えるような「コンパクトシティ(集約型都市構造)」という考え方が注目されており,このような交通・都市構造からのアプローチも重要です.図のように,今までは,人口増加とモータリゼーションの進展によってどんどん郊外が開発され,都市の拡大が進みましたが,現在は人口減少と少子高齢化の時代に入っており,このまま何もしなければ,将来は都市のあちこちで空き地や空き家が増加してしまいます.ますます公共交通も採算がとれず運営できなくなるなど,悪循環に陥ってしまう可能性もあり,特にお年寄りで車が運転できない人は移動も困難になってしまいます.そこで,土木計画では,CO2排出量の削減だけでなく,人々の生活の質の変化や,行政の財政負担の効率化,エネルギー分野からの低炭素化との関連など,様々な視点から,低炭素型都市やコンパクトシティを進めるとどんな効果あるいは考慮すべきポイントがあるのかを示す研究が行われています.また,コンパクトシティを進める上での問題点,実現方策など,実際の政策に生かすための実務的な視点からの研究も進んでいます.
集約型都市構造(コンパクトシティ)の考え方 (出典:国土交通省 都市・地域整備局 (2007)) |
(中道 久美子:東京工業大学)