●公共事業の評価
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公共事業(道路,港湾,ダム,河川整備などの事業)は,税金を使って行われます.税金を使った事業が,無駄な事業にならないかを事前に評価し,事業実施の有無を判断し,評価結果を公開しています.
代表的な評価方法が費用便益分析です.ある公共事業の建設費や運営費などの「費用」と,その公共事業によって国民が得られる効果をお金に換算した「便益」とを比較して,便益が費用より大きくなければ,事業を実施する価値がないと判断する方法です.
この「便益」計算の基礎をつくったのは19世紀のフランスの土木技術者ジュール・デュピュイという人です.交通施設整備の便益には,移動時間の短縮や移動費用の低減などの経済効果,ダムや河川整備では,水害の被害軽減の経済効果などがあります.
例えば,移動時間の短縮効果は,移動時間の短縮時間×それを享受した人数×その人たちの時間価値で算出できます.時間価値とは時間をお金の価値に換算したものです.
以上の効果は,比較的正確に計算できる効果ですが,公共事業がもたらす効果・影響は多様で,正確にお金に換算することが難しいものもあります.例えば環境影響や安全・安心の向上などです.
このため,その効果を物理的な数値で表したり,言葉で表現することで,総合的に評価するようにしています.こうした効果も正確に計算できるように土木計画学では研究を積み重ねています.
なお,公共事業の評価は,新しく整備するときだけではなく,整備の途中段階や,稼働してからも実施し,当初の評価に問題がなかったか,その事業の改善すべき点はないかを確認しています.
(岩倉成志:芝浦工業大学)