土木学会論文集につきましては日ごろより会員各位から多大なご支援,ご協力をいただき厚く御礼申し上げます.
論文の審査は,(1)論文が土木学会論文集に掲載されるにふさわしい内容かどうかを厳正に判定するとともに,(2)貴重な研究成果を早期に会員へ伝えるという,両面性を保証するよう行われなければならないことは申すまでもありません.これまでも編集委員会に,個別の論文の審査状況に関するお問い合わせが時々寄せられておりますが,編集委員会といたしましては,審査状況の詳細について情報開示するとの判断には至っておらず,個々の論文の審査状況につきましては「審査中である」としかお答えできません.しかしながら,論文がどのような手順で査読され,出版に至るかの編集手順の詳細につきましては,これまで必ずしも十分に会員の方々に周知されていないこともあり,これに関するお問い合わせもたびたびいただいております.ここに編集作業の流れを概略紹介し,会員各位のご参考にしていただくとともに,より充実した論文集の編集に向けての建設的なご意見を期待するものであります.
編集手順は各部門の事情や論文の性格によって必ずしも一律ではありませんが,概ね編集作業フロー図のような流れに沿って行われます.この手順を見てお気づきのように,このなかで最も時間を要するものは【査読】と【著者修正】の過程であります.【査読】は4週間を期限とし,これを過ぎる場合には8週間以内に査読が終了するよう督促し,これを過ぎる場合は査読辞退とみなし早急な対応を取ることになります.3名の査読者のうち2名が可の判定であった場合,未着の査読結果を待たずに担当委員の報告,小委員会の判定を経て,登載可とする対応を取ることも有ります.これは査読が,論文が掲載にふさわしいかどうか判定するための資料を提供するものであり,登載可否の判定そのものは小委員会の責任と権限に委ねられているからであります.一方【著者修正】に費やす時間は著者側の事情によることは明らかです.
以上のように査読・編集の手順は,基本的にボランティアの集合である学会活動の枠組みの中で,最も迅速で公正かつ的確な対応が可能なような工夫とノウハウを集約したものと自負しております.E-mail審議を取り入れる一方で,これを小委員会会議開催前の事前情報の疎通にとどめ,小委員会の審議の質を落とさない効率化に役立てているのもその一例です.
論文が早期に出版されるためには,編集委員会としてさらなる編集手順のきめ細かい改変に努めることは言うまでもありませんが,論文が繰り返し再査読のループをたどらないような,新規性,有用性,完成度,信頼度に富む内容であることが望まれます.再修正・再査読に至らなければ,半年以内で出版に至る事例も数多くあります.また査読を依頼された学会員におかれましても,査読期間の厳守,査読辞退の早期通知など必要な対応につきましてご協力いただきますよう,重ねてお願い申し上げる次第です.
皆様のご協力を得て,論文集がますます充実し,わが国のみならず世界に向けて貴重な情報発信と交流の場としての役割を増していきますことを願っております.