土木学会 平成26年度全国大会 第69回年次学術講演会

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実行委員長挨拶

 平成26年度土木学会全国大会を、9月10日(水)から12日(金)までの3日間、大阪大学豊中キャンパスを主会場として開催いたします。

 平成26年は、土木学会創立100周年の年にあたります。大阪での全国大会の開催は、平成3年に関西大学で開催して以来24年ぶり、また大阪大学としては昭和26年に開催して以来実に63年ぶりとなりますが、土木学会創立100周年の年に全国大会をこの地で開催できますことを大変喜ばしく思います。

 大阪は、豊臣秀吉が大阪城を築いて以来、日本の経済・商業の中心として栄えてきました。現在でも、大阪は関西の経済・商業の中心都市でもありますが、江戸時代には「江戸の八百八町」「京都の八百八寺」と並び、「浪華の八百八橋」と呼ばれ世界最大の「水の都」として栄えました。当時の大阪では、諸藩の年貢米を堀江によって運搬したため、数多くの橋梁が掛けられました。実はその多くは「橋普請」による橋梁であり、町人たちの意思により架けられた「町橋」でした。また江戸時代に天下の台所としても知られた大阪は、全国から船が往来する港湾都市でもありました。明治期には、港湾の近代化のために官民一体となって築港事業が行われ、国際的な港湾都市としての礎を築きました。 土木技術者は、時代に合わせた使命を負いながら、社会を築き人々の暮らしを支えてきたのです。

 一方で、我々は様々な自然災害と対峙し、時には大きな被害を経験しながらも、街を守り社会生活を維持してきました。ところが近年、自然災害に対するリスクが変化しており、新しい対応が求められています。平成23年3月11日に発生した「東北地方太平洋沖地震」では、死者・行方不明者が二万人を超え、3年が経過した現在でも被災者の多くは生活の基盤を取り戻せずにおり、その爪痕を大きく残しています。また関西では、南海トラフ地震の脅威や、奈良県・和歌山県で発生した記録的な豪雨による大規模な深層崩壊など、今までに経験したことのない自然現象と向き合う必要がでてきました。いま、土木技術者に求められる使命とは、時々刻々と変化する自然の脅威に対し、強靭な社会を作り上げていくことであり、幅広い分野における英知を集結して、土木技術を進化させていくことにあるのではないでしょうか。 土木学会では、100周年を記念して、「社会貢献」、「国際貢献」、「市民交流」を3本の柱とした事業を展開しています。これからも、土木技術者集団としての土木学会が果たす役割は大きく、その責務を真摯に受け止めるとともに、昔と変わらぬ使命感を持ちながら、より一層の努力と社会に対する貢献が求められています。

 今大会のテーマは「百年の計、変わらぬ使命感と進化する土木」とさせていただきました。特別講演会では、前大阪大学総長鷲田清一氏をお招きし、哲学者がみた土木のあり様についてご講演頂きます。また、全体討論会では、50年後の社会を見据え、パネリストに他分野の方々をお招きし将来の土木のあり方ついて討議していただきます。また、土木学会100周年記念討論会として、未来社会に向けて土木技術者が果たすべき役割について、他分野の技術者とともに討議していただきます。

 土木学会全国大会は、7つの研究分野に渡り広く知見が得られる唯一の機会であり、学会としての最大の行事でもあります。全国からご参加いただく会員・市民の皆様それぞれが、学術研究の研鑽、会員相互の交流、情報交換などを通じて、改めて土木技術者の使命と役割について考える機会となることを期待しております。100年という節目の年に、水の都として知られる歴史ある大阪の地において、このような重要な大会を開催できることを喜ばしく感じるとともに、土木学会の更なる発展向上に寄与することを祈念しまして挨拶とさせていただきます。

宮川 豊章 

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