特別講演1
9月12日 (火) 14:45~15:45 アクロス福岡 福岡シンフォニーホール
栗田 啓子 KURITA Keiko
東京女子大学 教授
略歴
1951年生まれ、東京都出身、経済学博士(パリ第一大学)。1974年東京女子大学文理学部卒業、1979年よりフランス政府給費留学生としてパリ第一大学に留学、1984年早稲田大学大学院商学研究科博士課程修了。同年小樽商科大学商学部講師。同助教授、教授を経て、1994年より東京女子大学教授。専門はフランス経済思想史。主著は『エンジニア・エコノミスト−フランス公共経済学の成立』(東京大学出版会)、共編著に『経済政策思想史』(有斐閣)、『日本における女性と経済学』(北海道大学出版会)などがある。
講演題目:ともに生きるための公共事業−フレンチ・エンジニアの「社会経済」思想
どのような公共事業が望ましいのだろうか?この問いに答えるために、フランスの土木エンジニアたちは19世紀前半にすでに費用便益分析の開発に着手していた。工事の効用を客観的な数値で示す指標を求めて、彼らは経済学の領域に足を踏み入れたのである。こうして、経済学と土木事業が結びつき、エンジニア・エコノミストが誕生した。もっとも、国内市場の統一や工業化の促進という目的は疑いようもなく、彼らにとっての課題はそれぞれの事業の正当性の証明にあったことに注意を促しておきたい。
しかし、19世紀も半ばを過ぎ、経済発展の陰の部分が現れてくるにつれて、なんのために公共事業を行うのかという問いがエンジニア・エコノミストに突きつけられるようになる。労働災害や失業による労働者の貧困問題、過剰な開発による環境問題などの社会問題に対応する必要性が生じたのである。
このような状況のなかで、社会問題に応えられる経済学をめざし、市場と国家(政府)をつなぐ経済活動を志向する「社会経済」(économie sociale)という新たな経済学の領域を開いたのは、鉱山エンジニアのフレデリック・ル=プレ(Frédéric Le Play, 1806-1882)だった。ル=プレはナポレオン3世が厚い信頼を寄せた技術官僚であり、彼の周りには多くの土木エンジニアも集まり、エンジニアの社会的責任を論じていた。
本講演では、ル=プレの一番弟子と言われる土木エンジニアのエミール・シェイソン(Emile Cheysson, 1836-1910)を主に取り上げ、公共事業における理念の問題を考えてみることにしたい。なんのための公共事業なのか、という問いかけは、現代でも必要な問いだと思うからである。
特別講演2
9月12日 (火) 17:50~18:20 アクロス福岡 福岡シンフォニーホール
麻生 泰 ASO Yutaka
一般社団法人 九州経済連合会 会長
略歴 1946年生まれ。1969年慶應義塾大学法学部法律学科卒業、1972年オックスフォード大学ニューカレッジ卒業。株式会社大沢商会を経て1975年麻生セメント株式会社監査役、1979年取締役社長、2001年代表取締役社長、2016年代表取締役会長に就任し現在に至る。(社)九州・山口経済連合会(現(一社)九州経済連合会)理事、同国際委員長などを歴任し、2013年(一社)九州経済連合会会長に就任。
講演題目: 九州から日本を動かす!
九経連では、「農林水産業の輸出拡大」、「観光の基幹産業化」を主要課題に掲げ、積極的に取り組んでいます。農林水産業では、九経連主導で農産物の輸出商社を作り、香港への輸出を始めました。今後はシンガポールへの輸出を計画しています。農家の手取り収入が増えることで、次世代が家業や地元に戻って来るようになることを目指しています。観光産業においては、増加する訪日外国人観光客の消費額をいかに増やしていくかが課題です。これらを稼げる産業にして、地方としての尖がりを見せるためには、何よりも空港・港湾・道路といったインフラの整備・充実が必要不可欠です。シームレス交通によるアクセスの向上を図り、災害に強い強じんな国土を作ることで、安心・安全を確保し、物流を活発化させ、より多くの観光客を呼び込むことができます。一方でインフラの老朽化も進んでいます。「安心」という日本ブランドが崩れないよう、メンテナンスを強化することも重要な課題です。
本講演では、「九州から日本を動かす」ための取組みと、そのためのインフラ整備の必要性を中心に述べたいと思います。