去る5月14,15の両日,緑に囲まれた東京電機大学鳩山キャンパスにおいて、環境水理部会研究集会が開催された。
今回の研究集会は,「環境水理学の諸問題−観測研究とその周辺」を主テーマとし,起承転結が完備した話題もさることながら,議論を誘発できる「問題提起型の話題」,例えば,当初の計画とは異なる成果となった場合,複数のジャンルを横断し在来学会の分類におさまりにくい話題,結論のない研究,などを広く募集し,その結果投稿された15件の論文について発表と質疑が行われた.
当日は,道奥康治部会長,会場をお借りした東京電機大学・有田正光先生の挨拶の後,中央大学・日野幹雄先生から「水理学−あの道・この道」と題した基調講演,続いて建設省土木研究所・島谷幸宏氏から「河川の自然環境保全と水理現象」と題した招待講演をいただいた.その後,主催者講演と河川環境整備基金の課題についての中間報告の後,引き続き一般講演が4つのテーマ(湖沼の水質・生物現象,エスチュアリー・津波など,環境流体力学およびその利用,環境水理学の将来を語る)に分類されて行われた.また,折しも東京工業大学を訪問中であった西オーストラリア大学J. Imberger教授が飛び入りで講演するという一幕もあった.
当日のプログラムを以下に示す.
平成11年度環境水理部会研究集会プログラム
基調講演
日野幹雄(中央大学) 「水理学−あの道・この道」
1.水理学の誕生と発達−特に戦後第一世代の時代の水理学
2.環境水理の夜明けのころ
3.水理学はどこへ行くのか?
4.最近の私の仕事
招待講演
島谷幸宏(建設省土木研究所) 「河川の自然環境保全と水理現象」
主催者講演・東南アジア河川域研究小委員会協賛
有田正光・ブタンカ(埼玉大学)
コメンテーター:浅枝 隆(東南アジア河川域研究小委員会幹事長)
河川環境整備基金の課題についての中間報告
松尾直規(中部大学)
浅枝 隆、藤野 毅、ドダンペ・ティラク、シロミ・カルラナツヌ(埼玉大学)
湖沼の水質、生物現象
天野邦彦(建設省土木研究所) 貯水池末端における植物性プランクトンの集積現象のモニタリング
中村由行(運輸省港湾技術研究所) 浮遊生態系と底生生態系のカップリングに関する研究動向
道奥康治(神戸大学) 貯水池の熱塩循環に関する観測調査
エスチュアリー、津波など
J. Imberger(西オーストラリア大学) Dispersing the anthropogenic impact on the coastal margin
松冨英夫(秋田大学工学資源学部) 陸上津波水理の現地調査
梅田信・鈴木伴征・鶴田泰士(東京工業大学大学院) 学生の立場での水環境計測の苦労
環境流体力学およびその利用
陳 飛勇(建設技術研究所) 深層水揚水施設による網走湖 塩・淡境界層の人工的制御
岡田知也(運輸省港湾技術研究所) 閉鎖性水域底層への表層水供給による水質改善効果検証の為の隔離水界実験+港研の研究紹介
畔上雅樹(東京電機大学大学院),飯島宏仁(CTIサイエンスシステム),山口高志(東京電機大学) 上昇流発生装置による防災調整池の水質改善効果
渡辺勝利(徳山高専) マイクロバブルによるダム湖の水質浄化実験
大成博文(徳山高専) マイクロバブルの物理化学的特徴と水環境蘇生機能
竹原幸生(近畿大学) PIV計測法の動向(イリノイ大学滞在記)
中井正則(東京電機大学) 負の浮力を持って斜面上に放出される3次元密度噴流の流動機構−実験室での可視化を中心にして−
環境水理学の将来を語る
小松利光(九州大学) リバーシブルで微調整の可能な河川技術の開発を目指そう!
石川忠晴(東京工業大学) 主観的環境と客観的環境
環境水理部会ホームページに戻る