三浦市にある「油壺験潮場旧建屋」は、明治24年に陸地測量部が全国6か所に設置した験潮場の一つを明治27年に現地に移設したもので、現存する験潮場としては細島験潮場※についで2番目に古い。
油壺験潮場は、日本の標高の基準である「日本水準原点」と密接な関係がある。明治24年に設置された日本水準原点の標高(原点数値)は、当初隅田川河口の霊岸島での潮位観測から決定されたが、その後、油壺験潮場での潮位観測と、油壺・日本水準原点間の水準測量によって原点数値の点検が行われるようになった。大正12年の関東地震では大きな地殻変動が発生し原点数値が変更されたが、その際に油壺験潮場のデータが活用されている。平成6年12月、隣にコンクリート製の新施設が設置され、平成9年1月から油壺での潮位観測は新建屋に移行した。
これらのことから、我が国の初期の測量技術を今に伝え、「標高の基準」の管理に重要な役割を果たした施設であり、主な測量の教科書には必ず記載があるなど親しまれているため、土木遺産に認定し、後世までその功績を伝えたい。
なお、現存最古の験潮場は、明治25年に建設、翌26年8月に再建された細島験潮場(宮崎県)で、平成26年度の選奨土木遺産に認定されている。また、神奈川県には、明治期の三角測量で「長さの基準」となった選奨土木遺産「相模野基線」(平成22年度認定)がある。