今回、推薦する栗尾沢砂防施設群は、10基からなり、概ね、現在より100年以上も前の1916年(大正5年)から1933年(昭和10年)の間に施工された歴史ある堰堤である。栗尾沢は1915年(大正4年)に埼玉県内で初の砂防指定地に指定され、県内最初に砂防工事が着手された。 特に代表的な切石積砂防堰堤の堰堤に使われている切石は、近隣の沢筋の山から採掘した石を石切り場で300×300×400の大きさで前面2分勾配、背面は垂直に加工され、ソリで現場まで運ばれた。大正5年当時における切石積の砂防堰堤は東日本では事例が少ないと推定されている。 横から堰堤を見ると、堰堤の前面が2分勾配になっていることがより確認でき、当時、機械がない中での石工職人の高い技術が窺える。また、堰堤の水通し部が若干破損しているものの、これまで大きな修繕もなく、100年経った現在でも前面が真っ直ぐに通っていることからも当時の高い施工技術が推察される。 堰堤の工事に当たっては、地域の人々が作業員として雇われており、当時、砂防工事の作業員は3日で1円稼ぐことができる仕事として希望者が殺到していたそうである。 栗尾沢砂防施設群は、明治43年の台風に伴う大規模土砂災害の対策工事として大正5年から始まったもので、その後も堰堤が追加され10基を超えている。現在も、本砂防事業工事はこの地域の土砂災害から守り、安全の向上に加え、経済効果にも寄与しており、地元の活性化へとつながっている。 以上より、本堰堤は100年以上前の砂防事業の歴史や技術を今に伝える貴重な土木遺産であることから、推薦するものでる。
【栗尾沢砂防施設群の概要】
【栗尾沢砂防施設群の位置】
【栗尾沢砂防施設群の個別箇所一覧】
(単位:m)
【埼玉県砂防発祥の地記念碑等】
【個別砂防施設の写真】
① No01_渓流保全工
② No02_床固工
③ No03_床固工
④ No04_堰堤
⑤ No05_床固工
⑥ No06_床固工
⑦ No07_床固工
⑧ No08_床固工
⑨ No09_床固工
⑩ No10_床固工
【資料】
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(6)代表的な切石積みのNO.4堰堤の全景(現況)