- 1.名 称:
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- 2.完成年:
- 1931(昭和6)年3月竣工
- 3.諸元・形式:
- RC閘門、幅5.5m
- 4.推薦理由:
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参考文献に基づき、以下の理由により推薦する。
六郷水門は赤レンガ堤防とともに、1918(大正7)年から1933(昭和8)年まで16年間継続された多摩川改修工事の一環で造られ、1931(昭和6)年3月に竣工した。
六郷水門の位置する場所は、池上・矢口・羽田の一部と本町をうるおす六郷用水の排水口である。しかも多摩川との合流点から上流500間(909m)の間には舟運があり、農産物を積み出し、肥料や雑貨類を搬入していた。多摩川改修工事で堤防がつくられると、舟運交通ができなくなり、またそれまで利用していた多摩川の荷揚げ場も利用できなくなる。そこでつくられたのが、排水を通す樋門ではなく、船も通れる水門だった。
水門の工事見積もりは、7万5千円であった。しかし、年間予算9万円余りの六郷町にとっては、単独での支出は不可能であった。1929(昭和4)年11月に3万円の国庫補助が認可された。また、地元の六郷堤外耕地整理組合は2万5千円、六郷耕地整理組合は5千円を町に寄付するとともに、工事中も町や住民は工事の完成に全面的に協力し、1931(昭和6)年3月17日に完成した。竣工から90年たった今もなお、点検、整備され水門としての機能は保っている。
下水道が普及するまで、六郷用水の末流をはじめ、六郷や池上、矢口、羽田の一部の地域の生活用水の排水を処理していた。下水道が整備され、用水路が埋め立てられたが、堤内地の舟だまりは、かつて舟運にも利用され、雑色運河と呼ばれた水路下流の様子を今に伝えている。
コンクリート造の2本の柱は、上部が丸みを帯びている。梁もゆるやかなアーチにしている。コンクリートでこうした有機的なフォルムとしており、国内の水門では唯一、ドイツ表現主義の影響を受けた特異なデザインになっている。同時期に作られた対岸の川崎河港水門(1928(昭和3)年竣工。金森誠之設計。1998(平成10)年登録文化財)が直線的なデザインであり、多摩川を挟みデザインが相対している。また、旧六郷町の町章をあしらった高欄もデザイン的特徴になっている。
技術面では、側面の壁に当時の内務省多摩川改修事務所長の金森誠之(しげゆき)氏が考案した金森式鉄筋レンガが川崎河港水門とともに初めて使用され、新技術の投入としても脚光をあびた。
現在、六郷水門は、多摩川改修工事の歴史や六郷用水の記憶を物語るとともに、多摩川河口付近の地域のシンボルとなっており、貴重な土木遺産であることから推薦するもの。
- 5.用語解説・参考文献:
【参考】
〇金森式鉄筋レンガ:鉄筋煉瓦造。丸鋼の鉄筋にコンクリートと煉瓦で補強された構造方。
【参考文献】
1)伊東孝『東京再発見』岩波新書1993年
2)京浜河川事務所HP
https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000099110.pdf
3)大田区立郷土博物館文化財担当編『大田区の文化財第40集六郷水門・六郷排水機場調査報告書』大田区教育委員会、2014年
- 6.設計者・施工者:
- 設計者:不明
- 7.所在地:
- 東京都大田区南六郷2
- 8.管理者:
- 国土交通省関東地方整備局京浜河川事務所
田園調布出張所 電話03-3721-4288
- 9.特記事項:
-
・日本の近代土木遺産2800選Aランク ・管理者同意済
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