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新潟県
あがのがわまんがんじ「きじゅんてんひょうせき」
阿賀野川満願寺「基準点標石」
R5年度認定(2023)
1.名 称:
あがのがわまんがんじ「きじゅんてんひょうせき」
阿賀野川満願寺「基準点標石」
2.完成年:
1915年(大正4年)
3.諸元・形式等:
形状寸法:載頭方錐形(さいとうほうすいけい)*1
     底辺32cm 四方、上辺24.5cm 四方、高さ44cm
刻字内容:天端上面「×印」、及び「東西南北」
     北東側側面「内務省」
     南西側側面「11M723」、及び「陸地測量部水準基面上」
石材(石質):安田町(現在は阿賀野市)産 草水石(くそうずいし)*2
 *1 四角錐(ピラミッド形)の上部を切った形
 *2 花崗岩(いわゆる御影石)の一種。一般のものより赤みのあることから
    別名「桜御影石」ともいわれる
4.推薦理由:

@概 要
 本標石は、1915年(大正4年)に阿賀野川では初となる国直轄による河川改修事業(阿賀野川第一期改修工事:通称「大正の阿賀野川大改修」)が着工された際、測量・工事計画図作成・工事施工を行うための基準点として内務省が設置したものである。
 工事計画図は現在の阿賀野川を形作ったものであり、本標石はいわば「現在の阿賀野川の形を決めた原点」とも言うべき存在である。
 また、内務省と陸地測量部の2つの組織名が刻字されているなど、標石自体にも希少性・独自性がある。
A歴史的意義
1)地域住民の治水への願い

 かつての阿賀野川は、平野部で大きく蛇行していたため常に洪水の脅威にさらされ、特に1913年(大正2年)8月に発生した新潟市江南区木津地先での破堤による洪水、通称「木津切れ」では阿賀野川と信濃川に囲まれた低平地である亀田郷の大半が水浸しになるなど、非情なものであった。これが契機となって治水を願う地域請願運動が展開され、「大正の阿賀野川大改修」が着工されることとなった。
 本標石は、阿賀野川大改修を後世に伝える証(あかし)として保存されている。
2)内務省と陸地測量部の共同作業
 本標石には「内務省」と「陸地測量部」という2つの組織名が刻まれているが、これは内務省が独自の基準で測量を行ったのではなく、当時最先端の測量技術を有する陸地測量部が行った「全国一等水準路線網」の基準を使用したことを意味しており、より精度の高い測量を行うべく、異なる組織が協力して測量作業を行ったことを示している。
3)河川の原点を示した石
 当時作成された「阿賀野川改修計画縦断面図」には、標石のある満願寺に「基線(参謀本部水準基面)=0」と記されており、この地を中心に阿賀野川の流路を設計していたことがうかがえることから、本標石は「現在の阿賀野川の形を決めた原点」と言える。
B希少性・独自性
1)標石の形状

 明治・大正時代に設置された「載頭方錐形」と同形の標石は、内務省が明治初期に設置した「原三角測點(げんさんかくそくてん)」のみで、以降は四角柱のものが主流となったため、大変貴重なものである。
 なお、現存する「原三角測點」は全国で3基のみ。
 (標石研究家 中村宏氏、阿賀野川河川事務所調べ)
2)標石の刻字内容
 2つの組織名が刻字されていることも大変珍しいが、それに加え、天端に刻まれた方位も測量目的の標石において、方位磁石が普及されていなかった当時としては貴重なものであり独自性がある。
3)その他
 他にも、測点の位置を天端高としている点(通常は天端に付けた×や+印の中心、又は球体の頂点)や、高度な職人技による加工が施されている点(天端角の面取り、他)など、一般的な標石とは異なる扱いが見られる。

5.設計者・施工者:
設計者:内務省新潟土木出張所
施工者:倉田六治
※ 阿賀野川河川事務所小冊子の記載より
6.完成当初との改変状況(補修履歴等):
 本標石が発見された位置は旧堤防脇だったが、時代の変遷により設置環境が「道路脇」に変化し、標石に欠けが認められたことから、平成28年2月23日〜24日に満願寺公園内で北方向60mに移設し保存した。
 なお、保存に当たっては基礎構造を含め一切改変せず、樹木移設の根巻き同様、慎重に作業を行った。標石が発見された位置には杭を設置し、併せて保存している。
7.所在地:
新潟県新潟市秋葉区満願寺「満願寺改修記念公園」内
8.管理者:
国土交通省 北陸地方整備局(阿賀野川河川事務所)
9.連絡先:
国土交通省 北陸地方整備局 阿賀野川河川事務所
総務課 専門職
〒956-0032 新潟県新潟市秋葉区南町14-28
tel.0250-22-2211
10.PR方法:
  • 表彰式は、毎年行っている土木学会関東支部新潟会主催の「土木の日講演会」の冒頭に行う。また、新聞各社などマスコミへの周知も併せて実施する。
  • 沿川の地域イベント等において、来場者に選奨土木遺産認定をアピールし、認識を広める。

■阿賀野川満願寺「基準点標石」


全景(右:標石本体、左:説明看板)

北東側側面「内務省」
 

南西側側面「11M723」
「陸地測量部水準基面上」

天端上面「×」「東西南北」

現地案内図

■関係資料


阿賀野川改修工事平面図(大正4年)

阿賀野川改修計画縦断面図(大正4年)

木津切れによる被害の様子(大正2年)

原三角測點の一つ(群馬県白髪岩)

発見時の標石(H28.2まで設置)と移設後の標石の位置関係(北方向に約60m移動)

標石発見場所の現在の様子(杭により位置情報を確保)
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