日本では毎年のように台風がきて、強い風を吹かせます。吊橋は風によってゆれやすい橋で、アメリカでは風でゆれて落橋してしまった吊橋もあります。橋がゆれるのは、橋のまわりにできる「うず」の影響です。
桁のまわりにできる風の「うず」
強い風でもこわれないよう、明石海峡大橋では、長さ40メートルの大きな模型をつくり、これに風をあてて実験し、風でゆれてこわれない橋桁の形を見つけました。このような実験ができるようになって、大きな吊橋も作れるようになりました。
橋の長大化をはばむ最大の敵のひとつは風です。1879年12月、ゴルフ発祥の地スコットランドのセント・アンドリュースにほど近いテイの入り江を渡る鉄道橋が強風によって落橋し、75名の生命を奪った事故は、橋梁史上有名な話です。この事故をきっかけとして橋桁にかかる風圧への関心が高まることとなしました。
今世紀に入ると、アメリカで吊橋がスパンを延ばしはじめました。同時に設計において弾性理論の代わりに撓度(たわみ)理論が採用されるようになると、経済的にするため桁の高さを低くおさえるようになりました。その結果、吊橋は再び風の試練を受けることになったのです。これが1940年に風による桁の振動で落橋したタコマナロウス吊橋の事故です。人が歩ける程度の風速で起こったこの落橋事故によって、吊橋の設計には風圧だけでなく、風の働きで起きる振動も考慮しなければならないことが分かりました。