全体討論会 of 土木学会平成21年度全国大会情報

全体討論会

9月3日(木)16:20~18:20 8号館 831教室

テーマ「これからの日本の社会と土木」~利他行の土木~

 土木の範囲は河川・道路・港湾・上下水道・鉄道・電力など幅広く、人々の暮らしはこれらの社会資本なしには一日たりと成立しない。にもかかわらず、公共事業批判は収まる気配を見せず、土木に対する若者の人気は低落傾向にある。その原因には様々なものが考えられるが、次のような批判があるのもまた事実である。多様化する国民、そしてその要求に的確に答えられていないのではないか? 土木事業自体が自己目的化し、土木本来の役割である国民生活の視点が薄れていないだろうか?
 今年の全体討論会では、土木の基本思想と考えられる利他行(他人のための幸福を第一に考えること)の思想に焦点を当て、土木が本来あるべき姿に迫りたい。
全体討論会では、最初に一般民衆を助けるために土木技術者集団を率いた奈良時代の僧、行基に焦点を当て思想、組織などについて,哲学者の桑子先生より話題提供していただく。
 その後、5名の識者より持論を展開していただき、土木が本来あるべき姿に迫る。

パネルディスカッション講師の紹介

コーディネーター

島谷 幸宏 SHIMATANI Yukihiro

九州大学大学院 工学研究院 環境都市部門 教授 LinkIcon

shimatani.png【経歴】
1980年 九州大学大学院工学研究科修士課程修了
1980年 建設省入省後 山梨県に出向
1982年 建設省土木研究所 研究員
1993年 建設省土木研究所 河川環境研究室長
2001年 国土交通省九州地方整備局武雄工事事務所 所長
2003年 九州大学大学院工学研究院環境都市部門 教授

著書・社会活動等

 住民と行政との協働や治水と環境技術の統合の必要性を説き、住民参加の川づくり、多自然川づくり、トキの野生復帰、川の風景デザイン、流域全体での治水などをテーマに、精力的に研究実践活動を展開している。
 著書に「水辺空間の魅力と創造(共著)」、「河川風景デザイン」、「河川の自然環境の保全と復元」、などがある。

パネリスト

桑子 敏雄 KUWAKO Toshio

東京工業大学大学院 社会理工学研究科 教授 LinkIcon

kuwako.png【経歴】
1980年 東京大学大学院人文科学研究科哲学専修課程博士課程修了
1984年 南山大学文学部 助教授
1989年 東京工業大学工学部 助教授
1996年 東京工業大学大学院社会理工学研究科 教授
2002年~2003年 フランス政府招聘によるフランス国立社会科学高等研究院客員 教授

著書・社会活動等

 環境・生命・情報などの問題にかかわる価値の対立、争論、紛争を分析し、合意形成プロセスの理論的基礎と実践的に応用するための手法を開発。日本・東洋・西洋の思想を問題解決のための知的資源として活用することを課題とし「空間の履歴」をキーワードに佐渡島、松江など全国で研究実践活動を展開。公共事業における合意形成についても造詣が深い。著書には「日本文化の空間学」「環境の哲学」「感性の哲学」「西行の風景」「理想と決断」などがある。

米田 雅子 YONEDA Masako

慶応義塾大学 理工学部 教授 LinkIcon

yoneda.png【経歴】
1978年 お茶の水女子大学 理学部数学科 卒業
1978年 新日本製鐵株式会社 構造解析担当
1995年 東京大学建築学専攻 松村研究室 研究生・研究員
1998年 NPO法人建築技術支援協会設立、常務理事
2006年 東京工業大学統合研究院 特任教授
2007年 慶応義塾大学理工学部 教授

著書・社会活動等

 公共事業だけに頼らない生き方を導く提言に、多くの建設業関係者が注目。業種の壁をこえた複業化、農商工連携、林建共働の政策を提唱。NPO法人 建築技術支援協会 常務理事のほか内閣府 規制改革会議委員も務める、 2006年には建設トップランナーフォーラムを結成。2009年3月にJAPICに森林再生事業化研究会を立ち上げ、林業改革にも取り組む。著書には、「建設業からはじまる地域ビジネス」(ぎょうせい)、「日本には建設業が必要です」(建通新聞社)、「建設帰農のすすめ」(中央公論新社)などがある。

玉川 孝道 TAMAGAWA Takamichi

西日本新聞社 顧問・西日本新聞会館代表取締役 社長

tamagawa.png【経歴】
1963年 九州大学法学部卒業
1963年 (株)西日本新聞社 入社
1982年 ワシントン特派員
1993年 東京編集長、東京支社長
2005年 取締役副社長
2007年 西日本新聞社 顧問・西日本新聞会館代表取締役社長

著書・社会活動等

 医療問題や地方分権に関する連載記事で、日本新聞協会賞を受賞。福岡子供病院や九州国立博物館の建設推進に尽力したほか、九州圏広域地方計画学識者委員、九州風景街道基本問題委員長、九州圏・沖縄県地域活性化推進会議委員、九州道守会議副代表などを歴任。著書には、「我が紙つぶて」「危機に立つ日本」「生命を守る」などがある。

出光 隆 IDEMITSU Takashi 

九州工業大学 名誉教授

idemitsu.png【経歴】
1965年 九州大学大学院工学研究科修士課程土木工学専攻修了、同大学助手
1966年 九州工業大学 講師
1970年 九州工業大学 助教授
1993年 九州工業大学 教授
2003年 九州工業大学 名誉教授

著書・社会活動等

 専門はコンクリート工学。高強度コンクリート、PC合成構造、産業廃棄物の利用等の研究を行いセメント協会論文賞、PC技術協会論文賞等を受賞。土木学会コンクリート委員会の部会で「コンクリート構造物の品質保証」をまとめ、以後、土木構造物の品質システム改革に取り組む。また全国の大学・高専での「土木史」開講の必要性を提唱。

岡本 博 OKAMOTO Hiroshi

国土交通省 九州地方整備局

okamoto.png【経歴】
1979年 東京大学大学院工学研究科修了
1979年 建設省(現国土交通省)入省
1996年 建設省(現国土交通省)道路局 有料道路課 建設専門官
2003年 国土交通省 九州地方整備局 道路部長
2005年 国土交通省 道路局 企画課長
2008年 国土交通省 九州地方整備局長

著書・社会活動等

 道路について、基礎的な調査から整備制度(有料道路、特定財源)まで幅広く経験。「事故発生の偶然変動を考慮した道路区間の事故危険度の評価手法(1982年10月)」において土木学会論文奨励賞を受賞、ロス時間を用いた混雑の分析・評価(1994年8月)において道路と交通論文賞を受賞。
道の駅の制度作りを担当。九州地方での道路事業の目標宣言を導入(ちゃくちゃくプロジェクト)、「走りやすさマップ」「通り名で道案内」等の道路活用策を考案。