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東日本大震災シンポジウム
平成23年3月11日にマグニチュード9.0の東北地方太平洋沖地震が発生した。この巨大地震の強くて継続時間の極めて長い地震動に加え,高い津波と多くの余震,さらには原子力発電所の事故によって,東北地方から関東地方までの広域にわたり複合災害が引き起こされた。この未曾有の災害に対し,土木学会には学術調査を通じて種々の被災・発災機構の解明に尽くし,その成果を元に復興,さらには今後の大規模地震と津波対策のあり方を検討し,安全な国土形成に資することが求められている。
本シンポジウムは,今回の大震災を含む過去の被災経験をふまえ,今後も発生するであろう巨大災害に土木技術者がどう立ち向かってゆくのかを考えるものである。
基調講演会
平成23年9月8日(木) 13:30~14:10 松山市民会館 (大ホール)
会長講演
講演題目「東日本大震災の教訓と社会安全システム ―土木の原点を考えた行動計画を―」
山本 卓朗 YAMAMOTO Takuro 鉄建建設(株)特別顧問 第99代土木学会 会長 |
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我が国はバブル崩壊以後,失われた20年と言われる混迷の時代を過ごしてきた。この間加速度的に進展した情報化技術とグローバル社会での競争激化のなかで国際的にも大変厳しい状況に置かれていることは改めて言及するまでもない。このような状況を打破するためには,真に意義のあるインフラ整備が必要であること,そして災害が多発する脆弱な国土防災を強化すべきことを我々は訴え続けてきた。にもかかわらず事態の推移はその逆であり,社会資本整備の遅れはますます顕著になり,本年3月11日に発生した東日本大震災はさらに深刻な事態をもたらすことになった。そして今後も予想される巨大震災に,土木技術者がどう立ち向かうかが改めて問われている。
一方近年の日本社会においては,あらゆる場面でコンプライアンスが強調され,それが故に柔軟な発想や議論が停滞して,思考停止社会に陥っているとさえ言われるようになっている。そして土木界に対する厳しい批判や評価も依然として続いている。この風潮は大震災以降も変わりなく,冷静に状況を分析した上で,将来の社会安全システムを構築しようという世論がなかなか浮上してこない。
このような状況の中で,我々自身の歴史を振り返ってみたとき,土木界にも改革すべき多くの課題があるのではないか。そして今後我々が積極的に展開しようとしている様々な活動がきちんと理解されるためにも“土木の原点を考える”ことから始めるべきではないか。
ではどのようにして議論を進めるか。“時代の推移と共に土木の営みが市民の率直な共感を呼ばなくなってきたのはなぜか?”を会員共通の課題として幅広い議論を始めよう。さいわい土木学会100周年を3年後にひかえて,100年記念事業を持続的に全国で展開しつつある。100年間を振り返り,100年後を構想するこの機会に,土木の原点を考え市民と共感できる行動へとつないでいきたい。
そして言うまでもなくその一つは,巨大震災に土木技術者がどう取り組むかである。東日本大震災が土木界に与えた強烈なメッセージはただ一つ,“土木の役割は国民の命を守ること”その一点に尽きると考えたい。そのメッセージに答えるために,全力を挙げて社会安全システムの構築に取り組みたいと思う。
特別講演
平成23年9月8日(木) 14:10~14:40 松山市民会館 (大ホール)
講演題目 「東日本大震災 ―初動期にどう対処したか―」
徳山 日出男 TOKUYAMA Hideo 国土交通省 東北地方整備局長 1979年東京大学工学部卒業・建設省入省,アメリカ合衆国道路庁国際研究員,関東地方整備局道路部長,道路局企画課長などを歴任,2011年より現職。 |
パネルディスカッション
平成23年9月8日(木) 14:55~16:55 松山市民会館 (大ホール)
テーマ「巨大津波とどう向き合うか―東日本の経験+東海・東南海・南海地震に向けて―」
【コーディネータ】
家田 仁 IEDA Hitoshi 東京大学 教授 1978年東京大学工学部土木工学科卒業・日本国有鉄道入社、1984年東京大学助手、1986年東京大学助教授、1995年東京大学教授、現在に至る。専門は、交通学、都市学、国土学。2011年から土木学会副会長(震災担当)。 |
【パネリスト】
河田 惠昭 KAWATA Yoshiaki 関西大学 教授 1974年京都大学大学院工学研究科博士課程修了,京都大学巨大災害研究センター長,京大防災研究所長など経て,2010年より現職。阪神・淡路大震災記念人と防災未来センター長,日本災害情報学会長などを兼務。専門は巨大災害、都市災害、危機管理。 |
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尾﨑 正直 OZAKI Masanao 高知県 知事 1991年東京大学経済学部卒業・大蔵省入省,関税局国際調査課,在インドネシア大使館一等書記官,財務省主計局主計官補佐などを経て,2007年より現職。 |
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木山 啓子 KIYAMA Keiko 特定非営利活動法人ジェン(JEN) 理事・事務局長 1994年よりJEN旧ユーゴスラビア地域代表として難民・避難民支援活動に従事。2011年3月11日の東日本大震災にも即座に出動。2005年エイボン功績賞受賞、日経ウーマン誌ウーマン・オブ・ザ・イヤー2006大賞受賞。 |
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佐藤 直良 SATO Naoyoshi 国土交通省 技監 1977年東京工業大学大学院理工学研究科修士課程修了・建設省入省,荒川上流工事事務所長,四国地方建設局河川部長,中部地方整備局長などを経て,2011年より現職。 |
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佐藤 愼司 SATO Shinji 東京大学 教授 1982年東京大学大学院工学研究科修士課程修了,東京大学助手,横浜国立大学助教授,建設省土木研究所海岸研究室長を経て,2000年から現職。専門は海岸工学,流砂系環境学。 |
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平野 勝也 HIRANO Katsuya 東北大学 准教授 1993年東京大学大学院工学研究科修士課程修了・建設省入省,1995年東北大学助手,2001年同講師,2008年より現職。 |
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小野 武彦 ONO Takehiko 清水建設(株) 代表取締役副社長 1968年北海道大学工学部土木工学科卒業・清水建設入社,2000年北海道支店長,2007年土木事業本部長を経て2008年より現職。 |