令和5年度土木学会全国大会 Japan Society of Civil Engineers 2023 Annual Meeting

実行委員長挨拶

令和5年度 土木学会全国大会を迎えて
不確実な時代における土木の新たな挑戦 ~技術でつながる「適散適集」な社会~

令和5年度土木学会全国大会実行委員長 中﨑 剛

中﨑 剛 NAKAZAKI Takeshi

令和5年度土木学会全国大会実行委員長

国土交通省 中国地方整備局 局長

 令和5年度土木学会全国大会は9月11日からの5日間で開催され、うち13日(水)から15日(金)までの3日間は広島県内で行われます。
中国地方での全国大会開催は平成27年に岡山大学で開催して以来8年ぶり、広島県内での開催は平成19年以来の開催となります。G7サミット(主要国首脳会議)が5月19日~21日の間、広島市内で開催され、世界的に広島が注目されている中での土木学会全国大会開催は、時宜を得たものといえるでしょう。

 今回の全国大会のテーマは、「不確実な時代における土木の新たな挑戦 ~技術でつながる『適散適集』な社会~」とさせていただきました。近年激甚化・頻発化する災害対応やインフラ施設の老朽化対策の必要性が高まる一方、人口減少や高齢化に伴い深刻な人手不足の進行が懸念されています。加えて、SDGsに向けた取り組みや地球温暖化の抑制のためのCO2の削減、ポストコロナの新しい社会の構築などのグローバルな課題も山積となっています。このように多面的で複雑な課題を抱えた先の見えないVUCA(Volatility・Uncertainty・Complexity・Ambiguity)時代において、安全・安心・持続的な社会を構築・維持していくためには、土木界の新たな挑戦が必要です。

 広島県においては、ポストコロナの新しい社会として、リスクを回避するための適切な分散と社会経済活動を活性化させるための適切な集中を両立する「適散・適集社会」を提唱しています。
本大会は、デジタル技術を活用するとともに、広島都市圏における広域開催に挑戦する「適散適集」型の大会とし、広島国際会議場【広島市】、広島大学東広島キャンパス【東広島市】、広島工業大学五日市キャンパス【広島市】を主要会場として開催いたします。2大学で行う年次学術講演会における共通セッションは、2拠点間でのオンライン参加を可能とし、「適散適集」に相応しいポストコロナの新しい大会のかたちを示したいと思います。

 年次学術講演会の会場となる広島大学は、人類史上初めての原子爆弾が投下された被爆地広島に昭和24年に国立の総合研究大学として開学しました。東広島市へは平成7年に移転を完了しています。現在12学部4研究科を擁する日本でも有数の総合研究大学として、大きく発展を遂げています。また、広島工業大学は広島市西部の佐伯区に位置し、創立から60年となる4学部12学科を擁する大学です。高い倫理観を持った「社会に奉仕する」技術者の育成をめざした教育を実践し、50,000人を超える卒業生が技術者として、さまざまな分野で活躍しています。

 広島県は、北に中国山地、南に瀬戸内海を望む美しい自然と温暖な気候に恵まれています。県内には、「原爆ドーム」と「嚴島神社」の2箇所の世界遺産があり、国内外から多くの方が訪れます。田中茂義土木学会長による基調講演「土木の魅力を伝える ~次世代に向けてイノベーションを起こす~」、松尾豊氏(東京大学教授)による特別講演「AIの進展と社会への影響」、全体討論会は平和記念公園内にある広島国際会議場で開催します。原爆ドームや広島平和記念資料館にもお立ち寄り頂き、原子爆弾被害の実相や国際平和文化都市“広島”の被爆後の復興の歩みを知っていただければと思います。

 気候は、温暖で過ごしやすい場所ですが、土砂災害警戒区域等の指定状況全国1位が示すとおり、一旦大雨に見舞われれば、同時多発的に大規模な土砂災害を引き起こす極めて脆弱な地質状況となっています。近年も大きな災害に見舞われており、ここ広島でも我々は技術により、地域を復旧し、守り、発展させていく重要な社会的役割を担っています。関連した現地見学会を計画していますので、是非ともご参加ください。

 本大会は、土木学会の7つの研究部門が会する唯一の機会として、学会の最大かつ最重要行事でもあります。全国から一人でも多くの学会員に広島で現地参加していただき、皆様の学術・技術の研鑚を積むとともに会員相互の交流、情報交換などを通じて、実り多い大会になりますことを祈念しまして、挨拶といたします。