関東の土木遺産 関東の土木遺産
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群馬県/前橋市、玉村町
まえばしちさきのとねがわのごがんとすいせいこう
前橋地先の利根川の護岸と水制工
平成24年度認定(2012年)
@利根川の護岸工
利根川の護岸工
写真  岩神の石堤(利根川左岸)
(写真は下流から石堤を写している。右は前橋公園で、正面はグリーンドームと中央大橋)
【施設の概要】
利根川に隣接して築城された前橋城(現在の群馬県庁)は、洪水が発生する度に被災の危険にさらされ、幾度となく護岸工事などの治水対策が実施されてきた。
 現存する岩神の石堤は明治30年代に建設されたもので、流れの速い土石混じりの洪水から堤防が破壊されることを防止するため、堤防表面を野面石や雑割石で被覆している。
 石堤の堤高はH=1〜4mで、天端の幅員はW=4〜6mである。法面の勾配は表が5分、裏法が5分から1割5分で施工されている。また、堤防は霞堤構造となっている。
【施設の諸元】
野面石・雑割石による石堤
石積延長 合計 L=693m(1号から4号の合計延長)
堤高        H=1〜4m
天端幅員     W=4〜6m 
A鉄線蛇篭護岸
鉄線蛇篭護岸
写真  鉄線蛇篭護岸
【施設の概要】
前橋市岩神町にある鉄線蛇篭護岸は、昭和22年のカスリン台風で被災した護岸を災害復旧事業で復旧したものである。
この蛇篭工は施工延長が約218mで、法長が12mと非常に規模が大きく、しかも手編みの蛇篭としては最大となる6番線(直径5mm)の亜鉛引き鉄線が使用されている。
目幅20cm、直径90mmの蛇篭は現地で製作されたものである。
 この蛇篭護岸は、施工後60年以上の歳月が経過したが、現在でも施工当初の機能を十分に果たしている。
【施設の諸元】
構造形式  鉄線蛇篭護岸工
主要諸元 
延長 L=218m
法長 L=12m
篭直径 0.9m
B小型ケーソン基礎護岸
小型ケーソン基礎護岸 【施設の概要】
群馬県庁裏の小型ケーソン基礎を有する護岸は、群馬県庁に勤務する河川系技術者自慢の河川構造物の一つでもある。前橋市街地を流れる利根川は、河道の広い場所は550m以上もあるが、県庁裏付近の河川幅は約220mと極端に狭くなっている。
 また、この付近の河川勾配は約1/230と急で、しかも河道が蛇行して水衝部が形成されている。このため水衝部には 5〜6mにも及ぶ淵が形成されている。
 このようなことから洪水の度に水衝部の護岸基礎が洗掘され、破壊し流出した。このため群馬県では、護岸工の基礎としては極めて異例であるが、小型ケーソン(長径が4.5m、短径が3.4m)を15基設置し、ケーソンとケーソンの間を鉄筋コンクリートの梁で連結することによる護岸基礎を築造し、洪水から護岸を守った。この対策工法については高い評価を得て、昭和28年に(社)全日本建設技術協会から第一回の全建賞を受賞している。
【施設の諸元】
主要諸元
護岸延長 L=334m、ケーソン基礎 N=15基
ケーソンの形状  小判型
径 3.4m(短径)〜4.5m(長径)
ケーソンの長さ  L=8m〜12m
C岩神水制工(手束式水制工)
岩神水制工
写真 岩神水制工(手束正威が考案した水制工)
【施設の概要】
水制工は河川の水衝部に設置し、洪水の力を弱めると共に流水の方向を河川の中央部に導き、河岸の崩壊を防止する施設である。岩神水制工は、群馬県前橋土木出張所長であった手束 正威(てづか まさたけ)が考案したものである。
 前橋市街地付近の利根川の流れは速く、5トン程度の石でも流す力を有している。このため手束正威は、木製の枠に玉石を詰める従来の木工沈床工に替えて、一つのブロックの重量を10トン以上とする場所打ちコンクリートブロックを採用し、更に、このコンクリートブロックを縦横に鉄筋(φ22mm)で連結することにより水制工自体の安定を図った。  このコンクリートブロックの表面には、末口20cm、長さ1.5mの杉丸太を立て、洪水の流れを河川の中央部に導く水制工とした。これら水制工の一部は、その後の河川工事(ふるさとの川モデル事業)で消失したが、残った水制工は60年以上を経過した現在でも洪水から前橋市民を守っている。
【施設の諸元】
構造形式 木工床水制コンクリートブロック
主要諸元 一連 30m×15m (50格間)
D 前橋公園下レール式大聖牛
E レール式杭出し水制工
前橋公園下のレール式大聖牛
写真 前橋公園下のレール式大聖牛

レール式杭出し水制工
写真 レール式杭出し水制工
【施設の概要】
D 前橋公園下レール式大聖牛
E レール式杭出し水制工
蛇行して流水が流れる前橋市街地の利根川に於いては、多くの水衝部が形成され、洪水のたびに水衝部の河岸が崩壊してきた。このような崩壊を防止し、流水の流れを河道の中央部に誘導するために、利根川には様々な形式の水制工が施工されている。
 土木遺産として推薦するレール式水制工もその一つで、それまで前橋〜渋川、高崎〜渋川、渋川〜伊香保の間で運行されていた東武鉄道(株)の廃線レールを再利用し、施工されたものである。
 このうち前橋公園下のレール式大聖牛は、前橋市民の憩いの場の一つである前橋公園に隣接する利根川河川敷にあり、公園に訪れた市民の興味を誘う河川構造物である。
 また、玉村町板井地内にあるレール式杭出し水制工も利根川右岸の河岸に設置され、今なお密やかに洪水から県民を守る貴重な河川構造物である。
【施設の諸元】
D 前橋公園下レール式大聖牛
・構造形式  レール式大聖牛
・主要諸元  5基
E レール式杭出し水制工
・構造形式  レール式杭出し水制工
・主要諸元  延長 L=200m
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